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2018.02.27

座談会「働き方最前線」

多様性を力に!各社が考える人材戦略

ダイバーシティ経営 座談会

ダイバーシティに関する事情や課題は、企業によって異なる。 とはいえ、共通の問題意識や解決手法を見出せる面もあるはずだ。 そこで、先進的な取り組みを実践する4社の実務担当者が集い、現状と課題を語り合った。

座談会の参加メンバー

前列左:大成建設株式会社 人事部部長 塩入 徹弥
前列右:丸紅株式会社人事部ダイバーシティ・マネジメント課長(現:物資・フットウェア部 部長付) 許斐 理恵
後列左:パシフィックコンサルタンツ株式会社 経営企画部 D&I推進室長 飯島 玲子
後列中:ファシリテーター 成城大学 キャリアセンター特別任用教授 高村 静
後列右:株式会社シグマクシス クオリティ&プロセスマネジメント部 ディレクター 郡 のぶ

多様な人材が組織を強くする

高村:今回は、ダイバーシティの実現に対して、独自の先進的な視点から取り組む4社にお集まりいただきました。最初に、取り組みのきっかけや概要をお教えください。

飯島:土木・建設コンサルティング事業を展開してきたパシフィックコンサルタンツでは、近年、スポーツ公園を運営したり、東日本大震災の復興に資する人材を行政機関に出向させるなど、サービスプロバイダとしての役割も果たす多様なプロジェクトを遂行しています。また、グローバル展開も加速しています。こうした業務遂行には多様な人材が不可欠であり、2015年には「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進方針」を定め、トップからのメッセージと3ヵ年の主要施策、目標値を明示しました。さらに「経営方針2016」では弊社が求める人材像として「人としての力」「プロフェッショナルとしての力」のそれぞれを具体的に示しています。こうした人材育成のためにもダイバーシティは欠かせないということです。

郡:シグマクシスは戦略コンサルティング、システムコンサルティング、デジタル変革支援サービス、イノベーション組織への変革支援サービスなど幅広い領域のプロフェッショナルを有し、お客様の様々な経営課題に応えるコンサルティング会社です。お客様の業界、業種も多岐にわたるため、これに対応するためには弊社の人材にも多様性が不可欠です。つまり、ダイバーシティは弊社の経営の前提条件ともいえるわけで、実際に多様なバックグラウンドの人材が所属しています。設立当初から多様性を受け入れる人事制度やワーク・ライフ・バランス環境を整備してきたこともあり、ダイバーシティを実現するための特別な取り組みは行っていません。

塩入:大成建設のダイバーシティ推進は、2006年に始まった女性活躍推進がその起点となっています。当時、建設市場は何年も縮小が続く大変厳しい状況にありました。そこで弊社が持続的に発展するために様々な施策が検討されたのですが、その一つが、それまで会社として能力を十分生かし切れていなかった女性社員の活性化でした。また同時に人材確保の面でも、将来の労働力人口の減少と建設産業への入職希望者数の低迷に対する危機意識もあって、意欲があれば属性に関わらず積極的に採用・育成することになり、基幹職として女性、またその後の外国人の採用拡大へと取り組みが広がっていきました。

許斐:丸紅でダイバーシティをクローズアップし始めたのは、2008年のことです。従来、総合職の採用は「日本人・新卒・男性」が主流でしたが、少しずつ女性総合職の採用が増えはじめた時期でした。収益の大部分は海外から得られるものであり、貿易だけでなくプロジェクト投資が増えるなど事業も多様化しています。そうしたなかで、人事部の中でダイバーシティを推進しようとの議論が始まりました。翌09年には専任組織であるダイバーシティ・マネジメント・チームが誕生し、主にワーク・ライフ・バランスに向けた取り組みからスタートしました。16年から3ヵ年の経営計画の中でも、グループ内ダイバーシティの推進を掲げています。

女性活躍も ワーク・ライフ・バランスも

高村:設立10年の新しい会社が創業当初からダイバーシティを実践している一方で、150年の伝統を大切にしながら革新を模索している企業もある。各社さんそれぞれのご事情もあるでしょうし、一方で共通の課題もあると思います。では、重点的に取り組んでいるのは、どのようなことでしょうか。

郡:多様で有能な人材を確保するためにも、ダイバーシティ・マネジメントは欠かせません。コンサルティング・サービスの質は、コンサルタントの質に大きく左右されますが、コンサルティング業界の離職率は高く、良い条件を求めて人材が流動しやすいのが実情です。一般に、コンサルタントは、短期間で自分の市場価値を上げられる仕事や会社を選ぶ傾向があります。これに応えるため、弊社では個別のキャリア・ゴールに合わせたプロジェクト配属や能力開発の個別サポート制度を導入しています。また、全社員にモバイルPCとスマホを支給し、時間と場所を選ばず働けるワーク環境も提供しています。

高村:育児への支援が充実していますね。

郡:出産・育児休業や時短のほか、出産祝い金として、第一子に10万円、第二子に20万円、そして第三子には100万円を支給しています。子どもが3人いてもどうぞ働いてくださいというメッセージを込めた制度です。また、満3歳までの子どもがいる社員には、一子当たり月7万5000円を支給し、復職を強力にバックアップしています。社員のうち女性はおよそ2割ですが、出産した女性のほぼ100%が復職していますし、イクメンもたくさんいますよ。

塩入:弊社では、作業所の施工管理など基幹業務はハードなものが多く、女性には難しいとの意識から、女性の基幹職採用は長らくありませんでした。その結果、ロールモデルとなる先輩女性社員が少なく、基幹職採用を始めたものの若手女性社員が将来像を描きにくい状況がありました。そこで当事者である女性社員に対しては、若手の時からキャリアプラン研修や、女性管理職育成研修をおこなっています。
また、当人たちに加えて育成のキーマンである男性管理職に対する研修も実施しています。男女の思考特性に基づく行動の違いを認識し、チャレンジングな仕事に慎重になりがちな女性社員の背中を押すことが目的です。難しいのは出産後の働き方なので、同じ研修の中で、子育て中の女性社員への効果的なマネジメント方法も伝えています。また、女性が活躍するにはパートナーの理解と協力が不可欠との考えから、パートナーと参加する仕事と家庭の両立支援セミナーを実施しています。

高村:社員同士の夫婦が参加できるのですか。

塩入:どちらか一方が社員であれば参加できます。結婚前のカップルでも構いません。弊社は男性が圧倒的に多い会社ですし、社会の仕組みも男性中心で築かれてきたものが多いので、男性自身に変わってもらうことが重要なのです。具体的には、男性を巻き込むために男性育休100%取得キャンペーンや介護離職防止をテーマにしたセミナーも開催しています。セミナーには役員が参加することもありました。

許斐:弊社は、グローバルでは多国籍の人材を適材適所に登用する取り組みを進めています。そして、丸紅本体では女性の働き方にフォーカスしています。というのも、現状、総合職の女性比率が1割未満と小さいこともあり、ヒアリングやアンケートを実施したところ、当社の女性活躍は未だ過渡期であると再認識できたからです。多様性のない組織にはリスクへの耐性が乏しいとの危機感もありました。視点の違う人材を増やすことが、組織としての強さと創造性の拡大につながるとの考えが浸透してきたのです。
そこで、まずは女性総合職の活躍の歯車を着実に回すことを目的に、2014年に「紅(ベニ)ノベーションプログラム」がスタートしました。女性社員や女性社員を部下に持つ管理職を対象に、アグレッシブなキャリア形成や効果的な育成等をテーマにした研修を実施しています。17年からは新任部課長全員に対象を拡大しています。会社全体として変わっていかなければならないとの意識からです。

高村:女性の活用を切り口に、多面的な展開を期待できそうですね。

許斐:確かに、紅ノベーションではリーダーシップのあり方を変える意義にも言及しています。また、出産や育児だけでなく、介護に関して葛藤を抱える社員をサポートする具体的な取り組みも継続しています。例えば、セミナーを通じて必要な知識を持って準備することで、ワークとライフを自立的にマネージできる体制作りが重要だと考えています。

飯島:男性社員の割合が高い点は、弊社も同様です。そのせいもあってか、育児休暇制度が8年間、1回も男性に利用されていないことがわかりました。専任部署であるD&I推進室を設けた2013年のことです。制度を充実させるだけでは浸透しない、やはり企業風土や文化を変えなければ、ダイバーシティの推進は難しいと痛感したわけです。弊社が社会変革を促すには、弊社自身が変わらなければなりません。
企業風土・文化の変革には、とにかくトップダウンのメッセージを発信し続けることだと思います。実際、弊社では繰り返し、社長や役員がメッセージを発信しています。その一方で、職場ごとにワーキンググループを作り、主体的なボトムアップの活動も行っています。テーマは雇用形態、ライフスタイル、分野間連携など多様です。
17年3月に、経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれました。外部からの評価が社員の気付きにつながり、弊社が目指している企業風土・文化の変革に大きな力となっています。また、次期事業計画では、初めてD&I活動を各組織が立てました。大きな一歩だと思っています。

高村:個別の施策としては、どのようなものがありますか。

飯島:新卒の若手社員には大卒5年目までコーチングを行ってキャリアデザインを支援しています。また、外国人や中途採用者、女性中堅社員を対象に、役員等によるメンタリングも継続しています。こうした個別支援のプログラムに加えて、ワーク・ライフ・バランスに関する施策も多いですね。仕事と子育てや介護との両立支援、相談窓口の設置や時短、時差出勤、柔軟な特例勤務、そして在宅勤務の試行などをしています。男性社員に対しても、育児を後押しする制度利用の啓発に取り組んでいます。

ダイバーシティの実現には会社全体の取り組みが不可欠

高村:ダイバーシティへの取り組みでは、何を突破口にするかは企業の事情によって様々です。ただし、多様な人材が活躍するために、ワーク・ライフ・バランスの実現は共通の課題だと思います。女性だけでなく、男性も「自分のこと」として育児や介護を捉えることが重要です。さらに、管理職の対応も鍵になるわけで、研修等の実施はたいへん効果的だと思います。取り組みの成果については、どのように評価していますか。

飯島:D&Iの成果目標を、経済産業省の資料を参考に社内インパクト・社外インパクトを横軸、直接的成果・間接的成果を縦軸とした4象限で整理しています(図表)。もっとも期待されるのは、社外インパクトと直接的成果、つまり経済的効果が大きいプロダクトイノベーションです。サービスの開発や改良に好影響となることを狙っているわけです。また、生産性や創造性の向上、業務効率化も、直接的成果につながります。具体的には、業務の効率化や残業削減などです。顧客満足や市場価値の向上、従業員満足の向上に関しても、なるべく数値目標を設定し、進捗を確認できるようにしています。D&Iが弊社の事業展開を支えるものと認識し、総合的・体系的な施策を展開できてきたことは大きな成果と捉えています。

許斐:4象限に整理するのは、わかりやすい方法ですね。弊社では、取り組みの成果を評価する確たる指標をなかなか見いだせないというのが現状です。とはいえ、営業部門で女性が活躍するようになってきましたし、海外駐在員も増えています。ダイバーシティには、外部からの評価によって社内での気づきが生まれる面もあると思います。弊社は2015年、17年に「なでしこ銘柄」(注1)に選定されました。初回の社内の反応はそれほどでもありませんでしたが、今年は違いました。GPIF(注2)が積極投資すると表明するなど、資金調達に有利なことがわかってきたからです。IR担当部署などが、高い関心を示していますね。飯島さんもおっしゃっていましたが、世の中の変化を味方にしながら、上手に変革していくという姿勢も大切なのではないでしょうか。

塩入:成果として一番わかりやすいのは業績ですが、BtoBの会社なので、直接関連付けをするのは難しいです。しかしながら、働きやすい環境の整備等ダイバーシティ推進に繋がる様々な取り組みのおかげで、女性の技術職や管理職が想定以上に増えています。同時に、もともと高かった社員満足度も更に高くなりました。そうした社員の意識は、生産性向上に繋がると思っています。採用については、景気動向に左右される面も大きいのですが、応募数や面接などの手応えから女性が働きやすい会社という外部からの評価が、人材確保にも繋がっていることを実感しています。

郡:弊社では、多様な社員がいるのはごく自然なこと、と受け止められています。社員個々の異なるライフスタイルをバックアップするワーク環境、異なるキャリアプランを支援するトレーニング計画などを社員と会社がともに考え実践することによって、業績向上や離職抑制といった効果が上がっていると感じます。今後の課題は、多様性の範囲を社内から社外へもっと広げていきたいということです。より多様な知識・経験・発想を持つ外部の有識者やプロフェッショナルと協働することにより、よりよいアイデアや発想が生まれ、お客様へのよりよい価値提案につながると考えています。

高村:ダイバーシティの実現には、専任部署だけでなく、部署を横断した会社全体の取り組みが不可欠です。その前提として、トップからの強力なメッセージが必要で、各社ともしっかりと実践できていることがわかりました。また、郡さんのご指摘のように、個別企業の取り組みで完結するものでもありません。社会全体の変化を先進企業がリードし、ダイバーシティを重視し受け入れる社会的な環境を作っていくことが求められます。

参加企業の概要(五十音順)

株式会社シグマクシス

株式会社シグマクシス。2008年設立のコンサルティング会社。「共創型価値創造モデルへの変革」「イノベーションをリードするベンチャー企業の支援」を掲げ、従来型の受発注ではなく、パートナーとして課題解決・戦略実現までをともにするユニークなコンサルティング事業を展開。事業投資も活発に行っている。従業員数は約440名。

大成建設株式会社

大成建設株式会社。創業は1873年、大倉喜八郎による大倉組商会設立に遡る。1946年に大成建設株式会社と改称。「建設」は土木・建築の両方を表すとしてconstructionを訳出した新語で、その後、他社でも採用されている。国内外の多くのランドマーク建設に携わってきたことから、「地図に残る仕事。」をキャッチフレーズに掲げる。従業員数は約8700名。

パシフィックコンサルタンツ株式会社

パシフィックコンサルタンツ株式会社。1951年、日本の戦後復興に貢献したいとの思いから米国法人パシフィックコンサルタンツ・インコーポレーテッドが創立され、54年に日本法人のパシフィックコンサルタンツ株式会社となる。「Producing The Future」をビジョンに掲げ、多くの技術分野でコンサルティング事業を展開。従業員数は約2400名。

丸紅株式会社

丸紅株式会社。創業は1858年、近江商人として生まれた伊藤忠兵衛が家業から独立して麻布を商ったことに遡る。1921年に丸紅商店、49年に丸紅株式会社が設立された。日本を代表する総合商社の一つとして、5グループ16本部を擁し、国内外に131拠点を有する。従業員約4500名のうち1000名程度が海外に赴任中であり、収益の多くを海外事業から得ている。

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