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事業内容/実績多摩大橋建設プロジェクト(平成19年度土木学会田中賞受賞作品)

多摩大橋建設プロジェクト(平成19年度土木学会田中賞受賞作品)
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橋梁構造物の流面形デザイン

2007年10月、東京都は昭島市~八王子市間の多摩川に多摩大橋を架設した。旧橋の上流に隣接する鋼7径間連続橋で、中央にアーチ橋を挟んでいる。橋長は、約461mであり、下路式補剛アーチの長さは、連続化したものとして日本最長の橋だ。同橋は、「平成19年度土木学会田中賞作品部門」を受賞した。
アーチ部の主径間長は約151m。約50mある一般部の約3倍の長さとすることで、川のみお筋に橋脚を造らないようにした。「スパン割りの違いで発生する端支点の負反力と応力アンバランスは、アーチによる補剛で対処した」と設計を担当した構造部次長(当時)の伊東は説明する。主径間をアーチで補剛することによって曲げモーメントが低減でき、桁高を全径間にわたって2.4mで統一して見栄えの向上も図った。
そして、多摩大橋のデザインテーマはエッジの処理だった。トラスやH形鋼などで見られる構造縁端部の線を極力排除し、形状もFEM解析をもとに、力学に合致した流線形にすることに努めた。具体的には、立体から立体を次々と抜き取って新しい立体を作る、抜き型の手法を適用した。さらに、製作しやすいように部材の形状を二次元曲線で構成した。
同橋は、東京都の北多摩北部建設事務所とともに計画が進められた。

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構造理論に裏打ちされたデザイン力

国内初の450m全連続補剛アーチ橋を提案

橋を渡ったり見たりする人々に、橋が醸し出す美しさや楽しさを感じてもらいたいという思いで設計に携わった。橋の論理的な解析力と三次元的なデザインカを培い、それらを融合させて実践してきた。
伊東は、次のように話す。「土木の世界では、構造設計を完了してから構造的に意味のない化粧板などを施す手法が見受けられる。その場合は、構造物のどこかに無理や無駄が生じると思う。構造とデザインを一体的に設計することが重要だ。」
伊東は、架橋条件が与えられると、短時間で様々な造形案が頭に浮かぶという。その能力は「自ら構造解析や作図などを実施するほか、他者が設計した数多くの構造物の形状や寸法などを頭にたたき込んで培ってきた。職人や芸術家は自分自身で思い通りの物をつくる。自分は構造と材料の理論をもとにして、美しい橋を設計する職人を目指した」と話す。
そして、デザインに強い手腕は、CADで磨いた。入社した当時、設計図面は製図工が墨入れで仕上げていた。若手社員の図面が後回しにされることに不便を感じた伊東は、出回り始めたCADに挑戦し、CG(コンピューター・グラフィックス)にも精通していった。設計理論に裏打ちされたCADの腕を認められて、2001年から首都大学東京の非常勤講師を務め、CAD応用演習を講義している。
伊東は、自ら設計した代表作に多摩大橋を挙げる。「デザインイメージは、生命体のような印象を吹き込むことと、繊細さを見せること。三次元的な広がりに、時間軸の視点移動を含めて四次元的な造形の広がりを意識した。」両橋の姿形は視点移動に伴って時々刻々と変わる。

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