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事業内容/実績鷺舞橋設計プロジェクト(平成21年度PC技術協会賞受賞作品)

鷺舞橋設計プロジェクト(平成21年度PC技術協会賞受賞作品)
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国内初、片面吊り形式の曲線吊橋の設計デザイン

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県立境川遊水地公園の概要

境川遊水地は、二級河川境川の江ノ島付近の河口から約11km地点に位置し、俣野遊水地、下飯田遊水地、今田遊水地の3つの遊水地で構成される総面積約30ヘクタールの遊水地である。県立境川遊水地公園は、この遊水地の広大な上部空間を公園として有効利用するもので、"水害から暮らしを守り、自然とふれあうことができる水辺のある公園"として、2007年8月に総合公園として一部開園した。
公園内には、境川の自然豊かな水辺空間を活かし様々な生きものが生息できるビオトープや、展示コーナーと会議室を備えた境川遊水地情報センターなどを整備し、環境学習が体験できる場を提供している。また、多目的広場などを整備し、スポーツレクリエーションの場も提供している。

事業内容

鷺舞橋(さぎまいばし)は、3池の中央に位置する下飯田遊水地と県内有数のサイクリングロードである県道藤沢大和自転車道を、境川本川とビオトープを渡河して結び、公園へのアクセス性と3つの遊水地の回遊性を向上させるとともに、園内のどこからでも認識できるランドマーク機能を果たすことを期待された。

設計デザイン

鷺舞橋は、神奈川県藤沢土木事務所が県立境川遊水地公園の園路の一部として2008年12月に開通させた自転車・歩行者用の橋である。発注者が設計に求めたのは、ランドマーク性とデザイン性に優れ、園路の回遊性とマッチすることだった。

図1 力の釣り合い概念図

当時構造部次長の伊東は、国内初の片面吊り形式の曲線吊り橋となる橋長129mのPC2径間連続吊り橋を選択した。橋脚から斜め外側に鋼製主塔を構築し、頂上から橋台部のアンカーに向けて張ったケーブルで桁を吊る。ドイツのヨルグ・シュライヒ博士が考案した一面吊り曲線吊り橋の考え方を参考にした。(図-1 概念図参照)博士の絶妙なケーブルの使い方に魅せられてから約20年間、適用する機会を待っていた。これらのケーブル構造は透過性に優れているため、景色を重視する公園などに適している。
橋桁をPC構造としたのは歩行時の振動を抑えるためである。桁高は桁下空間の確保や園路との取り付け、景観を考慮して65cmと薄くした。そして、「鷺舞橋」という名称は、公園に飛来する白鷺が羽を広げた姿を連想させることから、藤沢土木事務所が名付けた。
同事務所河川砂防部河川砂防第二課の課長は「期待していた姿形の美しい橋ができて、設計者に感謝している。園路の回遊性が確保できたうえに、橋下のビオトープの魚を狙って飛来するカワセミが観察できるなどの情報が広まり、来園者が増えている」と話す。

構造理論に裏打ちされたデザイン力

構造理論に裏打ちされたデザイン力

橋を渡ったり見たりする人々に、橋が醸し出す美しさや楽しさを感じてもらいたい。伊東が橋の設計に込めている思いだ。橋の論理的な解析力と三次元的なデザインカを培い、それらを融合させて実践してきた。
伊東は、架橋条件が与えられると、短時間で様々な造形案が頭に浮かんでくるという。その能力は、自ら構造解析や作図などを実施するほか、他者が設計した数多くの構造物の形状や寸法などを頭にたたき込んで培ってきた。
「職人や芸術家は自分自身で思い通りの物をつくる。自分は構造と材料の理論をもとにして、美しい橋を設計する職人を目指した」と話す。

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構造とデザインを一体的に設計する

「全体的には、構造設計者には、構造とデザインとを密接不可分な要素と考え、両者を一体的に設計するコンセプチュアルデザインの思想を持つことを推奨する。
コンセプチュアルデザインとは、既存の事例から構造や材料、施工、維持管理などの要素を引き出しに用意しておき、新しく設計する際に各要素を戦略的に組み合わせ、自分のデザインイメージとすり合わせて最適な解を求めることだ。
構造設計に携わる若者は、構想から詳細設計までの作業で鍛錬を積み重ねて、自分の引き出しの中身を増やし、その組み合わせ方に熟達してほしい。加えて、地形や動植物といった自然の形態や形状、大きさ、質感、色彩には必然的な意味があると思うので、よく観察して構造設計に取り入れる姿勢が欲しい。」と伊東は話す。