事業紹介印旛沼流域水循環健全化プロジェクト[千葉県]

湖沼の水質を「流域」で改善

「水循環」の視点から

千葉県北西部、15の市町村にまたがる印旛沼は、県内約100万人に飲料水を提供する貴重な「水瓶」。しかし、都市化や人口増加による汚濁が進み、水道水源湖沼としては水質全国ワースト1という状況が30年以上続いてきた。
そこで千葉県が中心となって2001年に立ち上げたのが「印旛沼流域水循環健全化会議」(以下、健全化会議)。下水道の整備など汚濁の発生源にのみ焦点をあてていた従来の対策と異なり、雨水の地下浸透や地下水、水の再利用などを含めた“水循環”の視点から問題を捉えようという試みである。水質改善だけではなく、水辺の環境や生態系、治水や利水などのバランスがとれた「健全な水循環」の実現を目指して、「流域マネジメント」ともいうべき観点からの取り組みだ。
弊社は千葉県の委託を受け、健全化会議事務局のサポート役として、住民会議の運営や資料作成などにかかわる。このプロジェクトの特徴について担当した湯浅は、「行政間のつながりを強化し、国と県と自治体などのさまざまな部署が融合しながら取り組んでいること」と語る。
健全化会議においては、河川、環境、農林水産、上下水道、都市など、関連するさまざまな部署に参加を呼びかけ、千葉県が横断的な協力体制によって多面的な取り組みを目指そうとしたことが、画期的だったのである。

プロジェクトを支える「印旛沼方式」

プロジェクトを支える「印旛沼方式」

設立から2年半ほどは、取り組みの可能性や問題点を探る検討期間として、学識者団体、市民団体を交えての意見交換会がたびたび行われた。 2004年2月、その成果を踏まえ、2030年を目標年次とする長期目標が設定される。印旛沼とその流域が目指す姿として、「遊び、泳げる」「人が集い、人と共生する」「ふるさとの生き物はぐくむ」「大雨でも安心できる」の4点を掲げた。

あわせて2010年までの「緊急行動計画」を作成し、「平常時の水量回復」「水質改善」などの観点から63の早期実現可能な対策を掲げる。湯浅たちが強調したのは、どの部署、団体がどの対策を担うのかという「役割分担」を、計画書の中に明記することだった。

「反対意見も根強かったのですが、実効性を高めるためにはどうしても必要だと感じたのです」と湯浅は振り返る。

見透視度計
見透視度計

同時に「印旛沼方式」と称するプロジェクトの基本方針を策定。印旛沼らしい独自性を持たせようと、伝統的な農業用語である「みためし(見試し)」の言葉を盛り込んだ。「状況を常に確認し、軌道修正しながら進める」というこの言葉の意味にならい、当初の計画に縛られすぎず、また計画をつくったら「はい終わり」とせず、柔軟に変更しながら進んでいこうという考えである。

同じく印旛沼方式に組み込まれたのが「住民と共に進める計画」。行政だけではなく、流域住民70万人一人ひとりが主体となって、計画の策定や実践に携わってもらおうという方針だ。健全化会議の取り組みには、これら「印旛沼方式」の姿勢が反映されている。

先進的な取り組みをいくつかのモデル地域で先行実施する「みためし行動」がその1つだ。湧き水をよみがえらせようと雨水浸透枡を家庭で設置してもらったり、無洗米を配布して生活排水の改善を促す試みが進行中だ。可能な限り多くの家庭に参加してもらおうと、湯浅たちも1軒ずつ訪ね歩いた。

また、水質や湧き水などのモニタリング調査にも、市民の参加を呼びかけている。水の透明度測定にカエルのイラストをマスコットにした「見透視度計」を設置したのは、「わかりやすさ」「親しみやすさ」を打ち出すためだ。

さらに、流域住民の声をすくい上げようと「印旛沼わいわい会議」と題した住民会議を、流域市町村持ち回りで年1~2回開催。毎回200~300人が参加し、都市部と農村部など特性が異なる地域がそれぞれの取り組みや現状を報告し合う、意見交換の場となっている。

「コンサルタント」の枠を超えて

「コンサルタント」の枠を超えて

健全化会議の立ち上げから6年。「流域マネジメント」という試みの中で、問われていたのは、いかに人々の関心を高め大きなムーブメントを生み出してゆくか。その方向性をどうつくるかだった。従来の「コンサルタント」の枠にとどまらない役割である。

もちろん、すべてが理想通り進んでいるわけではない。湯浅は「住民とともに進めるといっても、地域によってかなり温度差を感じる。真の意味で流域全体のムーブメントとなるにはまだ時間がかかる」と課題を口にする。

しかし一方では、水質汚濁の大きな原因と指摘されながらも、対策が未着手であった畑作地域の水循環の問題に取り組み、農家と一緒に減肥への試みを進めている。これは、パシフィックコンサルタンツという「民間」の役割を利用して行政が手を携えて実現したみごとな成果の1つだといえよう。

湯浅岳史 上原 浩

上原は、「住民が地域を自分たちで“管理する”という意識を持つきっかけをつくりたい」という。そして、「印旛沼を美しい湖沼にするという1つの夢に向かって、立場の異なる多くの人々と一緒に行動していることがうれしい」と語る。

上原の言葉に象徴されるように、行政だけ、市民団体だけでなく、さまざまな立場の人がつながり、一体となって地域をマネジメントしていく新しい試みをパシフィックコンサルタンツは支援している。

総合建設コンサルタントのパイオニアとして国内外で豊富な実績を持つ弊社が、
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