2019

海の森水上競技場整備事業
~埋立地から緑豊かな水上拠点施設へ~

海の森水上競技場整備事業 ~埋立地から緑豊かな水上拠点施設へ~

都民からトップアスリートまで幅広く利用される
都心のボート・カヌー競技場

世界的にも珍しい「海」の競技場を都心に実現

ボート及びカヌースプリント競技は、静水域の直線コースで順位を競う競技です。中央防波堤東西水路の海域で延長約2300m×幅約200mの静水域を確保するには、波・風等いくつもの課題を乗り越える必要がありました。このような立地特性の中、東西水路の両端に締切堤、水門、揚水・排水施設の設置を行い、大会開催時には潮位の影響無く一定の水位の維持を可能とする競技コースとしました。また、広域の風環境シミュレーションに基づく防風林等の設置により、コース間の風環境の差異を最小限とする工夫を行い、海での国際大会開催を実現しました。

構想から工事監理まで、15年に渡るプロジェクトを一貫して遂行
~多分野の高度な技術力を結集~

海上における静水域での競技コースの整備や、陸上の建築施設・ランドスケープ、中防内5号線橋梁架替え等を含む周辺インフラ整備等、競技場として必要な施設全般を構想段階から施工段階までトータルで関わりました。
計画・設計においては、国際ボート・カヌー連盟の施設整備に関する詳細要件・要望が多岐に渡り、また大会前には国際連盟による認証を必要とするため、当該敷地の特性から、コースや各施設の配置・仕様等において、要件に適合させるための検討・提案・調整が数多く発生しました。
この難易度の高いプロジェクト遂行には、港湾、建築、河川、地盤、ランドスケープ、環境、橋梁、道路、上下水の各分野の技術力を結集するとともに、国際大会やスポーツ施設に精通する技術者が15年間一貫して国際連盟の要件・要望のポイントや調整過程を把握し、各分野の整備方針にその意図を的確に反映しながら最適解を提案することで、様々な利用者に対して機能的な「国際基準の競技場」を実現しました。

大会成功に向けた利用者目線の計画・設計

計画・設計において、技術者目線に偏ることなく、利用者目線での理解を深めるために、過去の国際大会で使用したボート・カヌー競技場を訪れ、大会運営の観点から水域と陸域との関係性や、アスリート、メディア、大会運営者、観客等様々な利用者の利便性を調査・分析を行いました。
構想・計画時には、競技場の骨格となる全体配置計画を様々な視点で検討し、都民利用から選手の育成・強化拠点利用や国際大会まで幅広い利用目的に対応した整備方針を綿密に構築してきたことにより、常に「利用者目線の施設をつくる」ことを重視しながらプロジェクトを遂行してきました。
建築施設においては競技実施のための機能性を確保しながら、都心立地のボート競技場を感じることができるよう、東京ゲートブリッジや都心側への眺望を楽しめる空間構成とし、海(青)と森(緑)のカラーコンセプトを活かした内装計画としています。また、エントランスや共用部の壁面は、ボート・カヌーコース寸法をモジュールとした木材で構成し、温かみのある空間で利用者をお迎えするとともに、競技関係者に親しみを持って頂く空間づくりを行いました。

プラス1

【建築施設全景とポンツーン】
【建築施設全景とポンツーン】

主要施設である艇庫・グランドスタンド棟・フィニッシュタワーの陸域施設と水域施設を機能的に配置するとともに、内外の活動が双方から見えやすい「活気のうまれる」施設計画としています。

【グランドスタンド棟/観覧席】
【グランドスタンド棟/観覧席】

車いす席の分散配置・同伴者席設置や集団補聴設備等により、アクセシビリティに配慮した観戦環境を確保しています。

【グランドスタンド棟/事務室】
【グランドスタンド棟/事務室】

多摩産材の天井ルーバーと青系の内装により、海側へ開放感のある観戦環境を確保する他、大会以外は多目的に利用できる空間としています。

【艇庫棟/エントランス】
【艇庫棟/エントランス】

ボート・カヌーコース寸法をモジュールとした木材で壁面を構成し、競技関係者に親しみを持って頂く工夫をしています。

【艇庫棟/艇庫】
【艇庫棟/艇庫】

ボート・カヌーが収納しやすいラックを完備するとともに、南北に屋内外を貫通できる動線を確保することにより、機能的な艇庫としています。