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LPWA通信網(プライベートLoRa)を活用した 河川および火山監視用長距離データ通信実験に成功しました
2018年04月12日
弊社は、2018年3月14日~15日に国立研究開発法人情報通信研究機構(東京都小金井市、理事長:徳田英幸、以下「NICT」)と共同で、つくば市および筑波山を実験フィールドとした、プライベートLoRa通信プロトコルによる河川および火山監視用長距離データ通信実験に成功しました。この技術により、河川流域に多数配置した水位等の各種センサーの情報を収集し、高密度な情報による防災システムの構築が可能となります。また、火山火口周辺や斜面に設置したセンサーからの情報を安全に収集し、登山者や周辺住民への防災情報の提供への利用が期待されます。
■本実験の背景
現在、情報通信技術の利活用による多地点観測・監視による防災技術開発が注目されています。多くの監視センサーをインターネットに接続するIoT(Internet of Things)は、その基盤となる技術であり、現在様々なIoT技術開発が進められています。その一つである低電力広域通信技術LPWA(Low Power Wide Area)は、低消費電力で長距離通信が可能であるため、ソーラー給電による自立的な観測センサーによる河川監視や火山監視などへの応用が期待されています。本実験で用いたプライベートLoRa通信プロトコルもLPWAの技術の一つです。
図1 本通信実験で用いた観測拠点設置のLoRa中継局(親機):背景は筑波山
■実験内容
弊社つくば技術研究センター(つくば市作谷)を仮想監視拠点とし、プライベートLoRa中継局(図1)を建物2階屋上(高さ約15m)に設置し、実験用ビーコン送信機(図2)により通信可能エリアを計測しました。中継局からのデータ通信は、MVNOであるエコノミカル社(東京都千代田区、代表取締役:金野太一)の「神プラン」を利用しています。
図2 本通信実験で用いたビーコン発信機(子機)
第一の実験は、筑波山(観測拠点からの距離約7km)を仮想火山として計測を行いました。その結果、山頂の自然研究路(全長1.5km)のつくば市側全経路において、監視拠点からの通信に成功しました(図3)。また、登山路(白雲橋コース)においても、中継局の反対斜面を除くほとんどの経路上でデータ通信に成功しました(図4)。これにより、河川上流(源流)における水位や雨量計測の可能性が広がりました。
図3(左)筑波山自然研究路(つくばエクスプレスWebより抜粋)と(右)実験結果
第二の実験は、小貝川(観測拠点からの距離は最短で4km)を仮想監視河川として計測を行いました。その結果、監視拠点から4.7km上流および7.0km下流までがプライベートLoRaの通信対象エリアとなるデータが得られました(図5)。さらに、中継局を山頂に設置し桜川沿いの通信エリアを調べたところ、山頂から約16㎞下流の子機とのLoRa通信が確認されました(図6)。
■今後の展開
今後は、火山の火口付近に化学センサー、温度センサー、振動センサーなどの様々なセンサーを密に設置し、詳細な火山活動情報を取得することが可能となります。また、安価な小型水位計を密に(たとえば1km間隔)河川に設置し、本通信技術を利用することにより、空間的に高密度な水位監視システムを安価に構築することが可能となります。