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雑誌「東京人」 特集:土木地形散歩への記事掲載のお知らせ

ニュース

2017年06月01日

弊社は、雑誌「東京人」2017年7月号、No.385 (発行:都市出版)の特集「土木地形散歩」に、弊社顧問 細見寛による“最先端の技術と自然に抗わない思想で東京の治水を考える”と題したインタビュー記事が掲載されましたのでお知らせします。

今後、弊社顧問(日本大学理工学部 元客員教授)の細見寛による「水土の豆知識」をホームページに連載してまいります。




             

『東京人』P92-93 発行記念

~より詳しく記事を理解するためのコラム~
「東京水循環健全化 5つのプロジェクトの提案」 細見 寛

 東京が世界一の水都と呼ばれるために、何をしたら良いのでしょうか。水循環健全化の観点から、私は5つのプロジェクトの構想を提案します。
 東京の水循環を考える上で、奥多摩がキーポイントになります。ここから自然流下で都心に水を流せる江戸時代の遺構「玉川上水」もあります。奥多摩は、玉川上水と一体的に機能させることによって、首都直下型地震時に首都の減災に威力を発揮させることができます。
 貯めた水を活用するために最新科学技術(ICT技術、自然再生エネルギー技術、水処理技術、都市土木技術)を適用すれば、東京は世界に冠たる水都となることでしょう。
 中長期的に取組むべきこともありますが、2020年東京オリンピックの前に、世界の水問題解決に参考となる水循環を、可能な範囲で実現し、国際貢献に資することができれば素晴らしいと考えます。
 様々なオリンピック関連のインフラが議論されていますが、この5つのプロジェクトにも関心が集まって議論が少しでも深まればと思います。

5つのプロジェクト提案

1.「新型3次元雨レーダーによるゲリラ豪雨監視」
 内閣総理大臣が議長を務める総合科学技術・イノベーション会議は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で、新型水象レーダーを開発することを決めました、このレーダーが開発されると、上空から3次元で雨量を細かく把握することができます。このデータを使い、リアルタイムで地上の流れを予測すれば、浸水予測の精度が飛躍的に向上します。そしてその浸水予測を基に洪水予警報を出し、最先端ICT技術を使って危険区域の人々に伝えることができます。これは、世界一の水防災システムとなりますが、社会装備できれば素晴らしいと思います。そうすれば、歩行者にも浸水の危険を事前に知らせ、最適な避難行動を誘発に繋げることができると思います。

2.多摩川・荒川水系上流連絡水路による位置エネルギー有効利用
 荒川上流にある滝沢ダムは、東京都の水道水源となっています。また荒川下流からは、隅田川の浄化用水として、利根川と併せてその余剰水を流すことになっています。こうした水は、下流の低地で取水され利用されているのですが、荒川上流から多摩川上流に連絡水流を作り、東京都水道と隅田川浄化用水の一部を多摩川に落とせば自然流下させることができます。
 そして東京都水道分は、村山貯水池ルートへ、隅田川浄化用水分は玉川上水→神田川ルートで流すようにします。つまり、水の位置エネルギーを有効活用でき、水循環に要している現在の電力使用量を減らせるわけです。また、多摩川は、治水計画上、洪水調整施設が必要とされていますから、その新たな施設と連絡水路を連携させることを検討することも有意義だと思います。

3.玉川上水完全復活による危機管理用水路の確保
 玉川上水は、今もほとんど残され、北多摩水再生センターから再生水が流されています。この再生水を、自然再生エネルギーを使って増量し、四ツ谷の外濠まで届くようにします。この水流ルートは、ぜひとも確保しておきたいと考えます。というのは、首都直下型地震発災後、この水流ルートで、多摩川上流の水(小河内ダム等の水)を緊急に都心に呼び込まなければならない事態が想定されるからです。

4.打ち水水路(汐留川水流再生)によるクールダウン
 四ツ谷から浜離宮まで、かつての汐留川のルートの歩道に、小水路を設けます。四ツ谷から外濠の左周りに、玉川上水から増量された再生水を導水し、真田濠→弁慶濠→外濠通り歩道→マッカーサー道路歩道→浜離宮の汐留側(築地川)に流します。途中で、首相官邸、虎ノ門ヒルズなどの修景用水が流れ込むようにします。
 日本版ベヒレ(※)ですが、そこに再生水を流し、猛暑の時には、打ち水ができれば素晴らしいと思います。全く新しい都市インフラになりますので、整備や管理、官民分担もこれから考え出していくことになります。
 大規模ビルから打ち水水路に放流する際に適用されるルールは、雨水利用や水再生技術面で、世界の水インフラを牽引していくものでありたいと思います。また打ち水水路によって涼やかな癒し空間ができ、市場やカフェテラスなどができれば集客効果が増すことでしょう。打ち水水路に、ところどころ防災水ピットを配置しておくと、緊急時には多摩川上流からの流水の受水槽となるでしょう。オリンピックのときには、外濠通りやマッカーサー道路近辺の熱射病患者が減少することも期待できるでしょう。

5.江戸城外濠の再生と神田川洪水対策
 江戸城外濠(四ツ谷~飯田橋)の水環境を改善するために、溜まっていると想定されるヘドロを撤去すると共に、玉川上水から浄化用水と荒川から導水されている浄化用水の一部を導水します。水がきれいになれば、外濠クルーズも人気が出てくるでしょう。また、外濠の地下空間に神田川の洪水を溜め込むのです。雨天時雑排水も受け入れます。そうすることで、外濠にヘドロは溜まらず、神田川下流域の治水安全度は向上し、ゲリラ豪雨対策が進むことでしょう。
また、将来的には、神田川下流域を2層河川にすることを想定しておく方が良いと考えます。なお、JR中央線が併せて地下に移設されると、江戸城史跡の価値が一層高まることでしょう。

※ベヒレは、ドイツの環境首都フライブルグにあります。直訳すると「少女達」という意味で、かわいらしい水路ということです。