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パシコンが考える、土砂災害に対するこれからの地域の取組み ~地域の主体が参加する減災・防災へのとりくみ~

2012年06月18日

弊社では、減災・防災に対する様々な業務を行っております。 今般、弊社が委員会の一員として携わりました「大本山永平寺の森保全事業」取組みのご紹介を通じ、環境に配慮した森林管理と土砂災害対策の実現についてご提案をさせていただきますので、是非ご覧ください。

 1. 近年の土砂災害とこれからの森林管理    
平成22年の鹿児島県大隅町や広島県庄原市において発生した表層崩壊タイプの土砂災害、平成23年に紀伊半島で多発した表層崩壊や深層崩壊、天然ダムの形成など、山地森林域における豪雨に伴う土砂災害は、毎年のように国内の何処かで発生しています。  一時期、スギなどの針葉樹人工林で表層崩壊が多発することが指摘されましたが、平成22年の庄原土砂災害では、広葉樹の高木が生育する斜面においても針葉樹人工林のように崩壊が多発しています。また、近年は深層崩壊が注目されています。このように、崩壊のタイプは時間とともに何らかの要因によって変化しているのではないか、と推察されます。  一方、「森林・林業の再生に向けた改革の姿」(平成22年11月、森林・林業基本政策検討委員会)では、適切な森林施業が確実に行われる仕組みを整えることが第一のポイントとされ、意欲と能力を有する者が「森林経営計画(仮称)」を作成し森林施業を推進できるような制度へと改革する議論が進められ、平成23年度の森林法の改正はその道筋を示しました。これまで放置されていた高齢林化している針葉樹人工林が一斉に伐採され始める可能性もあり、そのとき、土砂災害を防止・抑制しながらどのように森林施業・森林管理を行っていくのかが問われるようになると考えています。

2. 生物多様性にも配慮した森林管理と土砂災害対策の実現    
「平成23年度の森林法の改正では、森林管理に生物多様性の観点が導入されました。森林が公益的機能を発揮するような森林施業が要請されるため、森林をどのような林相へと変化させるのか、半世紀先を見据えた森林管理計画の作成と計画の実行が求められるようになったと考えられます。  ところで、森林が公益的機能を如何なく発揮する生態環境豊かな森林の再生とはどのようなものでしょうか。緑豊かな日本の森林は、一見同じような景観のところも多いのですが、森林に入って見ると特性は単純ではなく、どのような順序で森林管理を行うべきなのかについては地域ごとの特性に応じた手法が必要になってくると考えられます。

 パシコンでは、まず、地域の人たちが、『そもそも自分たちが生活している地域の土砂災害が発生する可能性はどの程度のものなのだろうか?』といったところから議論を始められるような、検討ツールを作成することを目的として、山地の地形がどのように発達しているのかという観点から森林斜面の崩壊危険度(崩壊発生のポテンシャル)を把握する技術開発を進めています。

3. 地域における土砂災害対策へのとりくみ~大本山永平寺の取組み~    
福井県永平寺町にある曹洞宗大本山永平寺では、平成22年4月27日に、伽藍の山門前に並ぶ巨大な五代スギの1本が強風により幹折れし、鐘楼堂と舎利殿が破損する災害が発生しました。これを契機として、永平寺では「永平寺の森保全対策室」を設立し、多数の修行僧が修行を行う場であり、また多くの人々が参拝する場所でもあることから、改めて自然災害に対する防災対策を講じる必要性を認識し、様々な観点から調査や解析を始め、土砂災害を減災し防止する森林管理について取り組む方針で検討を行っています。そして、この取組みは、委員会(大本山永平寺、森ビル株式会社、パシフィックコンサルタンツ株式会社)において、議論を重ねながら進めています。永平寺伽藍は永平寺川と接しており、永平寺伽藍の裏山だけでなく、永平寺川流域の土砂災害への備えも視野にいれ、門前や行政との連携などの模索も始めているところです。

~大本山永平寺の森保全事業 取組みの紹介 第1号(平成23年11月)~