事業紹介工場省エネクリーン開発メカニズム[マレーシア]

温暖化防止へのチャレンジ

工場省エネCDMの「日本第1号」

マレーシア工場省エネCDMプロジェクト

先進国が途上国でCO2削減の取り組みを行い、その削減量をクレジットとして自国の削減枠に組み込むことができる「CDM」(クリーン開発メカニズム)。京都議定書に定められた柔軟性措置の1つとして世界的に関心が高い。
2007年3月、弊社がコンサルタントとして参加した、マレーシアにおける松下電器グループ工場の省エネルギープロジェクトが、国連CDM理事会の承認を受けた。工場省エネのプロジェクトがCDMとして認定されたのは、日本ではこれが初めてのこと。しかも、他企業と組むのではなく、松下グループ内の海外工場を対象としたプロジェクトだったため、大きな注目を集めた。
これは、空調やモーターなどの工場設備への省エネ対策導入によって電力や天然ガスの消費量を抑え、CO2の排出量を削減するプロジェクトである。CO2排出量の削減見込みは少なく、国連基準では小規模CDMプロジェクトに分類されるが、国連承認取得の難易度は高い。

難しい工場省エネCDM

2004年の初頭から、松下グループと弊社は、この工場省エネCDMを検討してきた。実は、弊社は1997年の京都議定書採択でCDMが誕生して以来、環境省や経済産業省に協力して国際ルール整備などに携わってきた。弊社の山田和人が国連の小規模CDMワーキンググループのメンバーを務めるなど、早い時期からCDMにかかわってきた蓄積が強みである。
このプロジェクトに携わる地球環境部(現:地球環境センター)は、「実は、工場省エネにはCDMのプロジェクトとしては、“効率のいい”分野ではないのです」と説明する。メタンやHFC23など、温暖化係数が高く、少ない投資で多くのクレジットを得られるようなプロジェクトと比べると、工場省エネはCO2削減量が必ずしも多くないため、クレジットは他案件よりも少ない。CDM化にかかる手続き費用や手間を考慮すると、得られるメリットが大きいとはいえない。
しかも、工場省エネに限らず、省エネプロジェクトのCDM登録は、他の案件よりもハードルが高い。たとえば、登録の用件であるCDMがなければこのプロジェクトは不可能だという「追加性」の証明にも、厳しい基準が求められる。省エネへの取り組みそのものにコスト削減効果があるため、「CDMなしでも可能」と判断されてしまうからだ。効率の良い新機器の導入についても、「単なる設備更新ではない」ことを証明しなくてはならない。
そのため、本来なら日本の得意分野であるはずの工場省エネCDMに対して、二の足を踏む企業が少なくなかった。しかし、松下グループはクレジットの多寡だけではない総合的な判断で、弊社とともに工場省エネCDMの実現化に向けた検討を重ねてきた。

マレーシアでの工場省エネCDMプロジェクトの流れ

紆余曲折を乗り越えて

エネルギー効率のいい新機器の導入など、どの工場でどんな対策が可能かを確認し、CDMの登録用件が満たせるよう計画を練っていく。マレーシアがホスト国に選定されると、2004年の夏ごろからさっそく現地調査を開始した。
対象となる工場は全16工場のうち10に絞り込まれ、コスト効率などから、5工場ずつをバンドリングして1プロジェクトとし、計2プロジェクトのかたちで実施することが決まった。弊社は計画支援と設計書の作成、日本やマレーシア両政府、第三者審査機関(DOE)からCDMとしての承認を得るための書類作成やプレゼンなど、さまざまな役割を担った。10工場すべてを回り、工場長や現場の担当者も含めて多くの関係者との協議を繰り返しながら、少しずつ具体化を進めていった。
CDMそのものがまだ新しい仕組みなだけに、ルールが突然変更されることもしばしばだった。プランの変更が余儀なくされたのも一度や二度ではない。マレーシア政府からの承認もなかなか下りず、8ヶ月近くにわたって待機を余儀なくされた。
最終的には、マレーシア政府から突然“プレゼンテーションをしに来てくれ”といわれ、松下グループの担当者とともに急遽現地入りし、政府やNPOの担当者の前で説明を行った。
マレーシア政府からの承認が下りたのは2006年7月。そこからさらに半年後、ようやく国連登録へとこぎ着けた。

「温暖化防止」の目標に向けて

日本の最新の省エネ技術を途上国へ移転し、現地での省エネを推進していく――。そこには、地球規模で長期的なCO2削減に寄与するという、クレジットだけではない価値がある。それをCDMとして、しかも自社工場での取り組みによって実現した。いわば未開の領域を切りひらいたことが、今回のプロジェクトの最大の意義だといえる。
とはいえ、国連への登録によって一件落着したわけではない。プロジェクトの実施期間は、10年後の2016年まで続く。その間、計画書どおりの排出量削減を実現してクレジットを得る必要がある。
そのためには、現地スタッフに対する継続的なトレーニングや、排出量削減に対するモニタリングも必要だ。すべてはこれからだ。この事例を他の企業に広げ、技術移転を進める重要な仕事も残されている。マレーシア以外の国での展開も課題で、弊社にも問い合わせが相次いでいる。
2008年からは京都議定書の「第一約束期間」が始まる。温暖化防止という共通目標に向け多様な手段と可能性を探り、提示すること。それは、弊社が果たすべき役割であり、責任となる。

総合建設コンサルタントのパイオニアとして国内外で豊富な実績を持つ弊社が、
最新情報に基づき、発注ご担当者さまの疑問、ご質問に広くお答えいたします。

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