事業紹介千葉都市モノレール検討調査[千葉県]

世界一のモノレールを未来へ乗り継ぐために

千葉都市モノレール
千葉都市モノレール

営業区間15.2km、昭和63年3月に開業した千葉都市モノレールは、懸垂型(※)として世界最長。懸垂型モノレールは全国でも3カ所しかなく、遠方からわざわざ乗りにくる人がいるほどです。開業当初、地域間を効率的に結ぶ新しい交通手段として期待されましたが、社会経済の変化や予想を大きく下回る利用者数などの要因により、経営状態は逼迫、運営見直しを迫られています。市民の大切な足が、いま岐路に立たされているのです。

  • 懸垂型:車両がレールにぶら下がった形のモノレール。対してレールの上を走るのは跨座型

事業概要

千葉県、千葉市および民間企業との第三セクター方式で経営される千葉都市モノレール。現在15.2kmで営業し、さらに3.6kmの延伸を計画していますが、利用客の伸び悩みや減価償却費がかさみ経営収支上厳しい状況にあります。そこで、県は「千葉都市モノレール検討調査委員会」(以下「委員会」)を立ち上げ、広く県民の声を聞きながら今後の方向性を検討することにしました。本業務は、委員会の運営を行うとともに、既開業区間や延伸計画区間について需要面や経営面からの将来予測を行い、モノレール事業を費用対効果や経営収支面から再評価し、今後の事業のあり方を検証することを目的としています。以下は、調査の主要検討内容です。

1 千葉都市モノレールの現状分析と課題把握
利用実績と需要予測の乖離要因の分析による需要確保の課題把握/軌道事業の収益構造から経営上の課題把握/保有資産のコスト構造からの課題把握
2 具体的な経営改善方策と将来需要、収支予測
まちづくりとの連携や会社組織改編も視野に入れた経営改善策の検討/交通実態を踏まえた現実的な需要予測/効率的な設備更新・投資などのコスト縮減策/実現可能性の高い改善策を踏まえた収支予測/延伸整備による経営への影響
3 総合評価と今後の事業のあり方
県民、市民の意見の反映/社会経済的効果も踏まえた事業の総合評価/既存路線の具体的改善策と延伸計画・整備に関する提言の策定

すべての分野をカバーする人材力が決めて

本プロジェクトは、一般プロポーザル方式で公募され、当初15社が参加表明しました。「コンサルタント選定委員会」が、弊社を含む6社を選定し、最終的なプロポーザルで受注を勝ち取ったものです。具体的なアピールポイントと受注の決め手について竹田さんにうかがいました。
「まず、総合コンサルとして、業務にかかわる全ての分野で豊富な技術力と人材を有していることが受注の最大のポイントだったと思います。構造・建築・設備分野、さらには、まちづくりや将来予測と、ハードからソフトまで一社ですべてカバーできるのはごく限られた会社です。その点弊社は、専門的かつ高度な知識をもって、5カ月という短期間でも確実に委員会の要求に対応できる体制をつくることができました。本案件は、建設コンサルタントの領域に留まらず、経営分析の要素も多分に含まれていたため、総合コンサルとしての弊社をメインとして外部経営コンサルを補完的に位置付けて共同で業務にあたる提案が有利だった部分もあるかもしれません。
また、技術的提案内容としてのアピールポイントには、『精度の高い需要予測と総合的な評価手法』『軌道事業の特性を踏まえた経営分析』『ライフサイクルコストの観点も踏まえたコスト縮減策』『アセットマネージメントの手法を採り入れた事業分析』といった内容が挙げられます」
具体的にはどのように業務に取り組んできたのでしょうか。
「経営の現状や改善策、評価などを調査検討し、それを委員会で議論してもらい、最終的には委員会としての『千葉都市モノレール事業に関する提言』にまとめています。提言の主な内容は、『今後も利用者の減少、設備更新などによる累積債務の増大が予想され、経費縮減や需要喚起など様々な対策を講ずること/延伸計画については、ルートの再検討と費用低減の実現可能性について確認すること/モノレール会社と行政がそれぞれの役割分担を明確にした上で協力して改善策に取り組むこと』等です。調査実施に際しては、自立経営を実現するため、現状の問題点とその要因を客観的に探ること、民意を反映しわかりやすいアウトプットを作成すること、トータルでのコスト縮減策を検討することに主眼を置きました。現在はこの提言を受け、具体的にどう進めていくかということを、追加業務という形で新たに進めています」

運賃設定、まちづくりの後れ…数々の問題点が浮き彫りに

事業に関わって明らかになった具体的な問題点についてうかがいました。
「今回の調査に当たって、沿線住民や千葉中心部に勤める方、買物客の方などにアンケートを実施しました。すると、まず問題点として挙がったのは運賃の高さでした。初乗りの190円から2~3区間の乗車で40円、50円のピッチで上がり、千葉から千城台まで450円もかかります。千葉駅前からは『100円バス』が走っているだけに、いっそう割高感があります。また、懸垂型ゆえの問題として高齢者の方から『地についていないので怖くて乗れない』という声もありました。さらに、現状では千葉駅での乗り換えも非常に不便です。様々な要因が、利用者の伸び悩みにつながっていることがわかりました。
こういう事態を招いた大きな問題点として、モノレールを中心としたまちづくりの立ち後れが指摘されています。また、モノレールを基軸としたバス再編が必ずしも十分でなかった点などもあげられます。さらに、計画当初は千葉・埼玉・立川・横浜の各中心部が業務核都市を育成し、都心の機能を分散する『業務核都市化構想』という都市づくりのビジョンがありました。その一つの装置として、モノレールで周辺住民を千葉中心部に集める交通ネットワークが計画されたのですが、その後の社会経済状況の変化による人口の伸び悩み等で、集客が困難になっているのが実状です」

第三セクターの行き詰まりに打開の糸口を

このプロジェクトのもつ意義、目的はどういったものなのでしょう。
「本検討調査は、現在の社会的ニーズに合った先端的な調査と位置付けられます。赤字を抱える第三セクターの実態を明らかにし、客観的な検討の上で、いかに社会的機能を発揮しつつ事業の継続を図っていくかの具体的方策を示すのが一つの目的です。また、本調査は公正性・透明性確保のため、各分野の学識経験者、専門家からなる委員会を設置し、中立的な立場のコンサルタントが実施した検討内容を公開の場で審議し、とりまとめたものです。さらに、ホームページなどを活用し、検討内容の公開と県民・市民からの意見収集を継続的に実施することにより、情報公開という社会的要請にも応えることができた意義は大きいといえます」
やりがいある事業であると同時に、大変な部分も多かったと竹田さんはいいます。
「なにしろ期間が短かったので、調査期間中(7月~11月)は異常な忙しさでした(笑)。委員会業務というと多くても2カ月に一度くらいが通常ですが、今回は1カ月に1回以上のペースで、7月末から11月末までのわずか4カ月で全6回実施しました。さらに、今回は全くの新規業務のため現状をゼロから理解した上で、それに対する改善策まで提案するわけですから、これはなかなか大変でした」

組織力を活かし、本来の役割を充分に発揮

本案件に取り組んだことによるパシフィックコンサルタンツにとっての意義を、最後にまとめていただきました。
「全社で6部門が参画し、外部の経営コンサルも加えたプロジェクトチームを結成して業務を遂行することにより、総合コンサルタントとしての組織力を充分に活かすことができました。また、発注者からの指導をあおぐ従来型の業務とは異なり、コンサルタントが独自のノウハウで客観的な資料を作成するというコンサルタント本来の役割が発揮できたことは、建設コンサルタント業界全体からみても大きな意義をもつものです。事業の本来あるべき姿を見極め、我々コンサルとしての考えを第三者の検討委員会に提示し、さらに県民・市民からの意見をいただくという調査実績は、今回の大きな成果のひとつだと思っています。
また、施設を造った当時とは社会経済情勢が大きく変わってしまったことにより、立ち上げた第三セクター運営が行き詰まり、税金で補てんしようにも財政力がそれに耐えない、という問題はどこの自治体にも出ています。事業見直しに関わるプロジェクトニーズはこれからますます増えると思います。今回は、その初期のプロジェクトといえるでしょう」

担当者より一言

竹田 敏昭

今回の成果につながった要因は、一言でいえば「和」でしょう。プロジェクトメンバーが一体となって同じ目標に向かって取り組んだからこそ、良い成果が出せたといえます。特に、優秀なサブリーダーとそれを支えたプロジェクトメンバーの技術力がこの「和」の求心力を保ってくれたといえます。一方で、当プロジェクトに集中的に取り組んだ分、プロジェクトに関わらなかった人にまで大変な思いをさせてしまいましたが、事なきを得ています。これも見方を変えれば、弊社の技術力と人材層の厚さを証明していると思われ、その層の厚さが当プロジェクトを陰で支えてくれたともいえます。
やはり、コンサルタントの重要なリソースは“人”であり、その“人”が組織の壁を越えて、プロフェッショナルエンジニアの意識をもって業務に取り組むことで、初めて、このような大きなプロジェクトが成功すると実感しました。

事業主体、施主 千葉県、千葉市
工期 2002年6月6日~2002年12月25日
所在地 千葉県千葉市
事業規模 懸垂型モノレール延長15.2km、延伸計画3.6km

総合建設コンサルタントのパイオニアとして国内外で豊富な実績を持つ弊社が、
最新情報に基づき、発注ご担当者さまの疑問、ご質問に広くお答えいたします。

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