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事業内容/実績高松港頭地区公共施設基本整備計画

高松港頭地区公共施設基本整備計画
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都市の「顔」を作れ。住民に負けない情熱で

地方の自立が叫ばれる昨今、従来の街並みを見直し、都市機能の更新を図る動きが各地で見られている。それは、新しい世代へ向けて「街のアイデンティティー」を確立しようとする試みである。温暖な気候に包まれた瀬戸内の街、香川県高松市。四国の玄関として知られているこの街でも、大規模な都市開発が進められている。ターミナルである高松港および高松駅周辺を整備し、都市の新たな「顔」を作り出そうとしているのだ。
この「高松港頭地区公共施設基本整備計画」において、パシフィックコンサルタンツは公共施設の柱である駅前広場や多目的広場等のマスタープラン策定から設計に至るまで多くの役割を担っている。

ユニバーサルデザインの思想でレイアウト

当初計画された開発イメージ
当初計画された開発イメージ

高松駅は全国でも珍しい、港と隣接したターミナル駅である。この計画は、宇高連絡船の廃止に伴い、東京の汐留や神戸のハーバーランドと同じように高松港からJR高松駅までの一帯を総合的に再構築し、駅前広場やホテル、コンベンション施設、シンボルタワー、そしてそれらに囲まれた多目的広場を設け、四国の中核都市として高度な都市機能を集積していこうというものだ。1992年からスタートしたこの計画、小西弘明は駅前広場と多目的広場の基本設計に知恵を絞っていた。
「まず、駅前広場の交通機能の配慮から着手しました。具体的には、人の動線の検討。時間帯によって動線の太さは異なります。たとえば朝夕には通勤客、昼間は買物客、そして週末は観光客、という具合に。どうすれば誰もが使いやすい"人に優しい"レイアウトになるかを考え、バス乗り場やタクシー乗り場などの公共施設を配置していきました。その際、この土地を初めて訪れた人でも一目でそうした施設が判る工夫も。バリアフリーを越えた『ユニバーサルデザイン』の思想ですね。」

高松のアイデンティティーは何だ

駅前イメージ
駅前イメージ

交通機能の配置の決定後、具体的なデザインを詰める作業に入った。駅前広場はまさに街の『顔』。それぞれの熱い思いがぶつかりあった。
「実はこの整備地区のすぐ隣に『玉藻城』というお城があるのです。ここは海水を堀に引き入れた珍しい水城。付近は公園になっていて、市民のみなさんからたいへん親しまれています。そんな歴史や文化を、この広場にも感じさせたい。たとえばこの広場にも海水を引き込み、水と親しめるような......そんなデザインを考えてみました。『ターミナル駅であるということ』『海に近いこと』そして『すぐ隣にお城があること』。この3つが高松駅らしさだと思うのです。ターミナル駅というのは、言い換えれば『終着駅』。高松に着いて駅を出たら、すぐに海が目に入ってくる。そんな広場にしたかったんです。」
どうすれば、高松の良さが引き出せるか。高松という街のアイデンティティーが確立されるか。メンバーたちは熱心に議論を重ねていった。そして、最終的に3つのデザインプランを作成し自治体に提出した。

知事と住民の方々の間に立って

最近では、こうした都市開発において行政の裁量に委ねるのではなく、住民側が積極的に参加していこうという気運が高まっている。この計画も、委員会を設けて住民の意見を聞きながら進められていった。
「実を言いますと、ここ高松では住民の意見はあまり反映されていなかったようです。そこで今回は委員会を開催し、住民の代表として、高校の先生、地元在住のデザイナーの方などいろんな方に参加していただきました。私たちもコンサルタントとして委員会に参加。当初は住民のみなさんに行政に対する不満があったようですが、会を重ねるごとに融和していきました。私たちも、住民の方々にできるだけわかりやすく理解してもらえるよう、ビジュアルに訴えた資料を作るなど、プレゼンテーションに工夫しました。」
最後の委員会では、県知事、県議会の意見や、東大の先生にもアドバイスを仰ぎながらほぼ最終案を決定し、詳細設計に向けて動き出した。

こんなロマンは、そうそうない。

小西弘朗

「こうした計画には住民の声が入ってこないと、本当に活きた街は生まれないと思うのです。その街を愛する気持ちがなければ、本当にいいプランはできない。これは私自身にも言えると思います。今私は大阪本社に籍を置いているのですが、これまで何度高松に足を運んだかわからない。この仕事は出張が多いのですが、ある先輩がかつてこんなことを言ったんです。『出張は旅だ』と。旅というのは、その土地に敬愛を払いますよね。私たちコンサルタントも、その土地を愛する意識を持ってはじめて、いい仕事ができるのだと思います。そして自分が一生懸命考えた提案で、街が変わる......ロマンがあります。」
小西の言葉である。コンサルタントの仕事は『一度やったらやめられない、麻薬的な仕事(笑)』なのだそうだ。彼の頭の中には、未来の美しい四国の「顔」が描かれている。