2021

サイクロン・イダイ被災地域強靭化プロジェクト

サイクロン・イダイ被災地域強靭化プロジェクト

アフリカの地で目指す「より災害に強いまちづくり」
(Build Back Better:「BBB」)

日本の災害・防災の知見をフィリピンなどアジア地域からアフリカへ展開

2019年3月14日から15日にかけてサイクロン・イダイがアフリカ・モザンビーク国の中部ソファラ州ベイラ市付近に上陸し、死者600名以上、負傷者1,600名以上、住宅損傷約24万戸という甚大な被害が生じました(2019年5月20日時点)。その中でも、ソファラ州ベイラ市は最も被害が大きかった地域の一つであり、学校等の多くの施設が損傷しました。これを踏まえ、モザンビーク政府は我が国に対し復旧復興計画に関する支援を要請しました。本事業は、ベイラ市復旧復興計画における行動計画の策定を支援し、「より災害に強いまちづくり(Build Back Better)」を目指すものです。
これまで、弊社ではフィリピンにおける台風被害や、インドネシアにおける津波被害などアジア地域において多くの復興支援をJICA調査団として進めてきましたが、本プロジェクトは日本が、そして弊社が参画する対アフリカ初の自然災害被害に対する緊急復興支援となります。日本の災害・防災に対する知見を、アジアに留まらずアフリカへと初めて展開させるものとして大きな期待が寄せられています。

日本の協力がサイクロン被害を最小化「コロナ禍でも可能な支援を続ける」

2020年12月30日、またもベイラ市北部にサイクロン・シャレーン(Chalane)が上陸しました。サイクロン・イダイに比べ規模は小さいですが、満潮時と重なり高潮の被害などが大きく懸念されました。しかし、プロジェクトではこれまで、サイクロン・イダイで得られた課題をもとに、プロジェクトで作成した高潮・洪水ハザードマップをもとにした災害リスクの理解促進及び避難計画策定支援を実施してきました。それが功を奏し、今回のサイクロン・シャレーン対応では、これらを活用することで、被害を最小限に抑えることができました(政府発表(2021年1月4日時点)によるとベイラ市では死者や負傷者の報告はゼロ)。浸水リスクの高い地区では、プロジェクトの支援を受け、ハザードマップを参照して事前に利用可能な避難所を確認していました。これにより、サイクロン・シャレーン接近時には、関係機関が連携して避難所への避難を住民に呼びかけ、住民は安全な施設へ事前にかつ円滑に避難することができました。ベイラ市長からは、「サイクロン・イダイの時は、事前に取るべき行動が分からず混乱した。今回はJICAプロジェクトのおかげで事前の避難をスムーズに行うことができ、被害を最小化できた。また、コロナ禍の中、遠隔でも最大限の成果が出るように、プロジェクト実施に尽力してくれていることに、感銘を受けている」と、日本の協力に対する感謝の言葉をいただいています。

災害に強いまちづくりの実現に向けて!「コロナ禍における建設事業の継続」

現在、サイクロン・イダイで被害を受けた公共施設の強靭化を目的とした建設工事が、ベイラ市内の5カ所で実施されています。新型コロナウイルスの蔓延による渡航制限により人が自由に動けない状況下であるため、IT技術を駆使して東京と首都のマプトから遠隔で工事を監理しています。そのひとつが、クラウドサーバーに蓄積された360度写真で、日本人とモザンビーク人のエンジニアが、あたかも建設現場に立っているかのように現場の状況を確認できるシステムです。このシステムにより、エンジニアは過去と現在の状況を確認することができます。
東京およびマプトから被災地ベイラ市とつなぎ、前述の公共施設工事のほか、遠隔での避難行動訓練や魚市場の強靭化プロジェクトなどを先方政府の協力のもと進めているところです。
修復・新築している公共施設は、小中学校や病院関連施設であり、一日でも早く子どもたちの笑顔が見えるように、また病院関係者の方々のお役に立てるように日々努力しています。

プラス1

弊社は、JICAの「南部アフリカ地域防災プロジェクト研究」を通じて、南部アフリカ地域8か国(モザンビーク、マダガスカル、モーリシャス、マラウイ、ジンバブエ、南アフリカ共和国、コモロ、セーシェル)への防災・減災の協力の方向性を検討しています。
アフリカは、干ばつ等の災害のイメージが強いのですが、気候変動もあり、南東部では、サイクロン被害が毎年のように拡大しています。そのため、モーリシャスにおいてサイクロン被害に対する防災プラットフォームが設立され、周辺参加国と災害対策や防災の知見を共有しています。モザンビークの復興支援や対策も「グッド・プラクティス」として参照しながら、このプラットフォームも活用し、南部アフリカ地域8か国における防災・減災に資する協力の方向性を検討していきます。