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電動マイクロモビリティとは?

コンパクトシティを支える新たな移動手段に高まる期待

都心部や観光地で電動アシスト付自転車や電動キックボードなどを気軽にシェアして利用する人が増えています。電車や路線バスなどに代わって、近距離を自分の選んだルートで好きな時間に移動できる電動マイクロモビリティは、観光だけでなく人口減少や高齢化の進行に伴ってコンパクト化が求められている都市の新たな移動手段としても期待が高まっています。社会イノベーション事業本部 交通政策部の岩上智裕と同都市マネジメント室の長尾将吾に話を聞きました。

INDEX

普及が進む電動マイクロモビリティ

マイクロモビリティや電動マイクロモビリティという言葉は、道路交通法や道路車両運送法で明確に定義された法律用語ではありません。モビリティは、移動のしやすさや機動性を意味する英単語で、転じて移動や交通手段、さらに、それを使ったサービスや交通システムを総称する言葉として使われています。

移動手段という意味でのマイクロモビリティは、一人または二人乗りで、スピードは抑えられ、比較的近距離の移動に使われる小型の乗り物を指します。電動アシスト付きの自転車や電動キックボードなどがその代表です。

マイクロモビリティが拡大している背景には2つのことがあります。

1つはライフスタイルの変化。温暖化により気候変動が誰の目にも明らかになるなか、できるだけ環境への負荷を抑えた暮らしを選択する人が増えてきています。CO2の排出抑制に貢献する自転車の活用も奨励され、2017年には自転車を環境負荷の低減、健康増進、観光振興に資する社会インフラとして新たに位置づけた「自転車活用基本法」も制定されました。さらに2020年から3年間に及んだコロナ禍で、外出や人との接触が制限されるなか、自宅から歩いて暮らせる範囲内にあるさまざまな生活施設・利便施設を活用するコンパクトなライフスタイルが定着。その欠かせない移動手段としても電動マイクロモビリティのニーズが高まりました。

もう1つはスマホでの手続きを前提にしたシェアリングシステムの普及です。所有せずシェアして必要なときに利用するという「シェアリングエコノミー」は、予約や実際の利用、決済までを、手元のスマホひとつで手軽にできるようにすることで、さまざまな場面に拡大しました。そのひとつが、観光地や都心部に設置されたポートを拠点にしたシェアサイクルです。

2010年代前半頃から普及が始まり、2021年には自転車だけでなく電動キックボードも加わりました。2022年には異なる運営会社によるポートの共同利用が始まり、シェアサイクルの普及に弾みを付けるものになりました。実際、導入都市数は拡大、設置ポート数も大きく増加しています。

シェアサイクルの導入都市数は拡大を続けている
シェアサイクルの導入都市数は拡大を続けている
出典:シェアサイクルの動向(確報版)(国土交通省)
ポートの設置数は急速に拡大し、利用が定着した
ポートの設置数は急速に拡大し、利用が定着した
出典:シェアサイクルの動向(確報版)(国土交通省)

道路交通法上の位置づけも明確に

また、電動マイクロモビリティとして「電動キックボード」(モーターの定格出力により性能に種類がある)「電動スクーター」「原動機付自転車(モペット)」「シニアカー」など、さまざまな名称の乗り物が登場し、法律上の区分も分かりにくくなっていたことから、国は2023年に道路交通法を改正、一般的な電動キックボードを念頭に、新しい車両区分である「特定小型原動機付自転車」を新設しました。

登場当初の電動キックボードは一般の原付扱いで、運転免許を必要としヘルメット着用も義務でしたが、 道路交通法の改正により「特定小型原付」という新たなカテゴリーに分類され、16歳以上であれば免許は不要、ヘルメット着用も努力義務にとどめられました。より利用しやすい環境が整えられたといえます。

電動マイクロモビリティの道路交通法上の走行ルール

種類 必要な免許 走行場所 制限速度 自賠責
保険
ヘルメット
着用
自転車 電動アシスト自転車 不要 車道(左側) 24km/hで
アシスト停止
不要 努力義務
原付 特定小型原付
(一般的な
電動キックボード)
不要(16歳以上) 車道(左側)が基本。
自転車道、自転車通行帯
20km/h 必要 努力義務
特例特定小型原付 不要(16歳以上) 車道(左側)が基本。
自転車道、自転車通行帯。
一部歩道(車道側)
6km/h(構造上) 必要 努力義務
原付一種
(モペット)
原付免許または
普通自動車免許
30km/h 必要 義務
原付二種 小型限定
普通二輪免許
制限速度に
準ずる
必要 義務

    :2023年道路交通法改正で新設された区分
※いわゆるシニアカーは歩行者扱いで車両とはみなされない(車道は走れない)
※電動キックボードのなかには定格出力が大きく、原付一種に分類されるものもある
※モペットはペダルのみでの走行ができてもすべて原付扱い。定格出力が大きく原付二種に分類されるものもある

 

新たな交通手段として高まる期待

電動キックボードがより利用しやすくなるように法改正が行われたのは、今後のモビリティ環境の整備に果たす電動マイクロモビリティの役割に大きな期待が寄せられているためです。

生活者の足として重要な役割を担ってきた路線バスは、人口減少による利用者の減少や慢性的な赤字、運転手不足などにより、公営民営を問わず減便や路線廃止を余儀なくされています。都市間や市町村内の拠点間の移動は鉄道でできても、そこから先を毛細血管のようにつないでいたバス路線が利用しにくくなり、特に高齢者の日常の買い物のための外出や病院・介護施設などへの通院・通所が不便になっています。持続可能な都市をつくり上げるためには、生活に必要な施設を一定のエリアにコンパクトにまとめ、エリア間を鉄道やLRT(Light Rail Transit:次世代型路面電車システム)、路線バスで結ぶと同時に、それぞれのエリア内の"ラストワンマイル"の移動を支える新たな移動手段が必要です。そのツールとして電動マイクロモビリティが好適であると考えられているのです。

また、電動マイクロモビリティを新たな交通手段として組み込めば、都市中心部においても鉄道やバス路線などにとらわれない移動が可能になります。例えば鉄道路線が東西方向に整備された地域において、電動マイクロモビリティのポートを南北に連続させることで新たなルートでの移動が可能になります。これまでは歩くには遠く、また、適当なバス路線もなかったことから生活圏に入っていなかった商業施設やスポーツ施設、文化施設、レストランや店舗を生活圏に組み込むことができ、自分が暮らすまちの魅力を高めることができます。また早朝や深夜であっても、電動マイクロモビリティなら時間を選びません。パシフィックコンサルタンツが株式会社Luupと共同で行った「都市部におけるマイクロモビリティのシェアリングサービスに関する利用実態」の調査でも、電動マイクロモビリティ(LUUP)の主な利用目的について、住宅地では通勤‧通学での利用が全体の約4割を占めており、商業・業務地では仕事中の移動、買い物、食事、観光・娯楽など、さまざまなシーンで活用されるなど、人々の日常における必需性の高い移動に役立っていることが分かっています。

さらに電動マイクロモビリティを交通手段として定着させれば、中心市街地に車を入れないといった新たな交通施策を現実的なものにすることもでき、観光開発においても、今までにない観光スポットや周遊ルートの開発が可能になり、観光客の誘致拡大につなげることができます。

※ 出典:『都市部におけるマイクロモビリティのシェアリングサービスに関する利用実態』(パシフィックコンサルタンツ,株式会社Luup)

見えてきた課題と普及のために必要なこと

しかし、電動マイクロモビリティはこれまでにない乗り物であり、誰もが安全で安心して使えるものにするためには課題もあります。

その1つは走行環境の整備です。自転車の普及とともに、専用道や通行帯などの自転車の走行空間が整備されてきているように、電動マイクロモビリティの走行を前提とした走行環境の充実が必要です。少し飛躍した考え方ですが、例えば道路空間再配分と併せて、時速6km以下のレーンや歩道、10km~20kmのレーン、そして40km以上のレーンというように、走行速度によって車線を区分することで、安全度を高めることが出来るかもしれません。

また、立ったまま運転する電動キックボードは高齢者には不安が大きいことから、同じ特定小型原付のカテゴリーに含まれるものとして、座って運転でき、荷物かごもついた「電動シートボード」が2025年秋から一部エリアで投入されています。また座って乗れる三輪・小型のユニバーサルカー「Unimo(ユニモ)」のコンセプトモデルも開発されており、市場への本格的な投入が期待されています。

座って運転できるタイプもある
座って運転できるタイプもある
より安定した3輪タイプも登場した
より安定した3輪タイプも登場した
出典:株式会社Luup,ホームページ

こうしたハード面での整備だけでなく、電動マイクロモビリティの運転者や道路上で共存していくことが求められる自動車運転者の、それぞれのモラルの向上など、社会全体として電動マイクロモビリティを受け入れていく社会的受容性の向上も欠かせません。

現状では、車道の左側以外の中央寄りを走ったり、二段階右折をしていないというルール違反の運転も見られ、また、マイクロモビリティを邪魔に感じて、脅かすような走り方をする自動車もあります。社会的な啓蒙や、学校での交通安全教育などを通して、電動マイクロモビリティの必要性への理解を促したり、実際にこの乗り物に触れたり、乗ったりする機会を増やしていくことが重要です。

地域公共個通と連携したモビリティハブのイメージ
地域公共個通と連携したモビリティハブのイメージ
出典:第2回施設デザインWG 事務局資料(国土交通省)

パシフィックコンサルタンツの取組と将来展望

移動のしやすさへの配慮は、これからの持続可能な都市をつくるために重要なテーマです。パシフィックコンサルタンツでは、国の『第3次自転車活用推進計画』の作成支援や多くの地方公共団体の自転車活用推進計画の策定を支援する一方、シェアサイクルの導入についても、早くから支援策の検討を行ってきました。2025年10月からは川崎市が進めるモビリティハブの実証実験にPark Line推進協議会の法人会員企業の一社として参加。路線バスの乗り換え拠点をデマンド交通やシェアサイクル、電動キックボードなどの多様なモビリティサービスの提供拠点である「モビリティハブ」として運用するという取り組みを進めました。

川崎市で行われたモビリティハブの実証実験のイメージパース
川崎市で行われたモビリティハブの実証実験のイメージパース
出典:川崎市初︕モビリティハブ 「KAWASAKI のるーと HUB」の実証実験を開始します︕〜多様なモビリティを導入し、移動の選択肢を拡充〜(川崎市)

電動マイクロモビリティを都市機能に組み込んでいくためには、こうしたモビリティハブをつくり、子どもから高齢者まで、誰もが移動しやすい未来をつくりあげていくことが必要です。同時にそこにカフェや図書館、公園などを設け、人が集まって楽しく過ごせる場所にすれば、まちの活性化を導く拠点にもなります。

パシフィックコンサルタンツでは社内の交通政策部や道路部、建築部、DX事業推進部、ソリューションビジネス本部などが持つ、多分野にわたる技術や知見をひとつにまとめ上げながら、電動マイクロモビリティを組み込んだ持続可能なまちづくりに貢献していきます。

岩上 智裕

IWAKAMI Tomohiro

社会イノベーション事業本部
交通政策部 エグゼクティブコンサルタント

1999年入社。ITSや道路交通・公共交通・駐車場・低炭素・道路空間再編など幅広い交通計画分野に従事し、交通に関わる新しい取組みに関するコンサルティングや実証実験に携わる。また、渋谷・新宿・品川などの交通結節点整備事業や大規模民間開発に関わる都市・交通計画業務にも従事。近年は、バスタプロジェクトの中心的な役割を担いつつ、官民連携による事業推進や民間顧客を中心にした都市開発計画の支援やマイクロモビリティ・モビリティハブの導入検討など、新たな市場・顧客の拡大に注力。技術士(総合技術監理部門-建設-都市及び地方計画)、技術士(建設部門-都市及び地方計画)、技術士(建設部門-道路)、交通工学研究会認定TOE。

長尾 将吾

NAGAO Shogo

社会イノベーション事業本部
交通政策部 都市マネジメント室 主任

2021年入社。公共交通計画の策定支援や交通インフラ整備に関する政策・事業評価業務に従事。人流データや交通需要予測技術を活用し、自治体や民間鉄道事業者を対象に交通施策の効果検証を行い、施策実施の意思決定を支援。近年は、経済モデルや土地利用・交通モデルを用いた都市・交通政策の評価に加え、都市・地域におけるマイクロモビリティの活用可能性の検討などにも取組中。技術士補(建設部門)。


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