地方公共団体が所有する遊休地の新たな利活用の手法としてLABVに注目が集まっています。官民がそれぞれ出資して事業体をつくり、公共施設と民間の収益施設を複合的に整備するもので、両者が対等の立場でリスクもメリットも半々で取っていくという意欲的なものです。導入支援も行っているパシフィックコンサルタンツ社会イノベーション事業本部 PPPマネジメント部 PPPプロジェクト室の高木 信吉と大西 智樹に話を聞きました。
INDEX
LABVとは?従来のPFIとの違い
LABVはLocal Asset Backed Vehicleの頭文字を取ったもので、官民共同事業体のことです。自治体が自らの所有する遊休地などを現物出資し、民間事業者が資金出資を行って設立するもので、この事業体が複数の開発プロジェクトを連鎖的に実施する事業手法をLABV方式と呼びます。PFI(Private Finance Initiative)と同じPPP(Public Private Partnership)の1手法ですが、従来のPPPと大きく異なるのは自治体と民間事業者の関係です。これまでのPPPはあくまでも自治体が発注者であり、民間事業者は受注者でした。PFIなど、どのような事業方式でも、この受発注者の関係が基本になっています。しかしLABV方式(以下、事業体を含めてLABVと総称)では、公共と民間が対等の立場で詳細な契約を交わし、事業リスクも事業メリットも公平に分け合いながら一体となって事業を進めます。官民連携の取り組みにおいて、ここまで対等・横並びのものはこれまでありません。
また、PFIでは特定の公共施設が事業の対象になりますが、LABVでは商業施設やオフィスビルなどの収益施設を組み合わせた複合的な開発を行うことができます。この自由度の高さもLABVの特徴です。ただし、自由度が高いといっても、民間事業者の思惑で何でもできる、というわけではありません。LABVには対等の出資者として自治体が加わっており、両者合意のもと契約で定めた地域ビジョンや施設整備計画に則って事業を進めることが求められます。
LABVの特徴
これまで、公共事業の縮小や統廃合などで遊休地となった土地を所有している自治体の選択肢は基本的に3つでした。引き続きその土地で新たな公共事業を行うか、民間に土地を貸し出し地代収入を得るか、売却するかです。公共施設を建設して一部のエリアを貸し出すというものや、施設を建設し、所有しながら運営権を長期間民間に移譲するもの(コンセッション方式)もありますが、これらも基本的には自治体の事業です。
しかしLABVは自治体単独の事業ではありません。自治体が「土地はあります。この土地を有効に使って住民のためになり、かつ収益も生み出せるような事業を一緒に作り上げていきませんか」と民間事業者に呼びかけて共同で実施するものです。
自治体単独では資金の確保も難しく、また事業ノウハウも十分とは言えません。民間の企画力や事業マネジメントのノウハウを取り入れることで、より住民ニーズに応え、まちの賑わい創出につながる事業とすることが可能になります。さらに、土地の現物出資のみで、それ以上の財政負担を伴わずに実現できる点は、自治体にとって大きなメリットです。
また、民間事業者にとっても、ゼロから土地を取得して単独で事業を立ち上げるのは難しくても、LABVであればすでに土地が用意され、また事業体に自治体が入るのでその信用力を活かすことができます。必要に応じて両者で事業を見直しリスクを抑えることもでき、投資がしやすい環境が整っているといえます。
国もLABV の可能性に注目し、2025年版の『PPP/PFI推進アクションプラン』の中で、地方公共団体が抱える課題である「活用策が決まっていない公有地を複数所有する」場合にLABVを積極的に活用すべき、と推奨しています。

既存資料をもとに当社にて作成
もしその遊休地が都市部の一等地で誰もが認める価値を持っているのであれば、所有を続け地代収入を得ながら有効に活用することができます。しかし価値がそれほど高くないが、公共施設に限定せず、住民の利益やまちの賑わいの創造のため、リスクを負ってでも地域事業を推進したいと考える場合に、LABVは有効な事業手法です。
LABV導入の留意点
ただし、導入に当たってはいくつか留意すべき点があります。
まず、自治体としての関与度が高いということです。自治体と民間事業者はそれぞれ出資して1つの事業会社を設立し、議決権も対等に保有しながら事業運営を進めます。万が一、不採算事業となれば、自治体は現物出資した公有地を失う可能性もあります。
また、PPPでは、いったん決めた基本的な事業の仕様が途中で変更されることはありません。事業期間が終了するまで、当初の仕様で進められるのが一般的です。一方、LABVでは、新たな地域ニーズの顕在化や事業環境の変化に応じて、事業計画を柔軟に見直し、複数事業のバランスを調整していく必要があります。そのため、「すべてを民間に任せる」のではなく、自治体自らが事業経営の当事者として主体的かつ継続的に関与していく姿勢が求められます。
その観点からも、自治体が行う当初の事業パートナー探しは重要であり、その点は慎重かつ確実に進めることが必要です。
パートナーを募集する時点では、土地はあっても、まだその詳しい利活用の方向は概略のままです。しかし、民間事業者を選定し、長期間にわたって大きな事業を一緒に進めていくことが必要になります。自治体が掲げる地域の将来ビジョンを共有し、一緒に歩んでいけるパートナーであるかどうか、見極めが重要です。
その際、選択が資本力や事業規模を重視する安全の側に傾いたものになれば、事業計画も安定重視の新鮮味のないものになりかねません。かといって公有地を出資する以上、冒険しすぎることもできません。スタート後の事業会社の運営においても、当初のビジョンに則り、公共性を担保しながら、同時に会社として収益を上げていくバランスの取れた経営が求められます。
これまでにない官民の"水平関係"での取り組みとなるだけに、LABVにはこうした留意点があります。しかし同時に、一定のリスクを伴いながらまちの未来を築くという、新たな選択肢が示され、自治体における可能性が広がりつつあります。
パシフィックコンサルタンツのLABVへの取り組み
LABVの導入はまだ国内の2例にとどまっていますが、導入の可能性について検討を始めている自治体もあります。パシフィックコンサルタンツはPPP/PFI推進について独自の事業部門を持ち、まちづくりの部門などと連携しながら長年にわたってその支援を続けています。LABVについても、佐賀県上峰町の「上峰町中心市街地活性化事業」の一環として進められている「上峰町定住促進住宅整備事業」の支援を行ってきました。

事業の発端は、2019年、24年間にわたって営業を続けてきた大型総合スーパーが閉店したことです。スーパー側は約60,000㎡の土地と建物を無償で上峰町に寄贈することを決定しました。町では、その土地活用をどのように進めるか検討を開始し、2020年4月に上峰町中心市街地活性化事業をLABV方式で進めることを決定しました。その後、民間事業者パートナーを募集し、2021年4月に合同会社つばきまちづくりプロジェクト(LABV)が設立されました。これは民間企業10社の出資によるものです。町が5億円相当の不動産を現物出資し、業務執行社員として50%の持ち分を保有しています。
この上峰町のLABV事業は、多目的交流施設、文教施設、道の駅、定住促進住宅(住宅+商業テナント)などの事業から構成され、定住促進住宅事業については当社が支援業務を受託しました。
当初、事業資金確保が難航しましたが、この事業についてはLABVが100%出資する子会社としてSPC(特別目的会社)を設立してPFI(コンセッション)事業として切り離し、国の補助や金融機関からの融資を受けやすい体制を整えることを提案しました。こうすれば事業資金の確保がしやすくなります。仮に定住促進住宅をLABVが所有するとなると、固定資産税や不動産所得税などの負担により通常の公営住宅より収支が悪くなるという問題があります。その点でも、PFI事業と組み合わせることには大きなメリットがあります。
この定住促進住宅については、4階建ての建物が2025年度中に完成、1階を商業施設、2階から4階を賃貸住戸(全62戸)として入居が始まっています。商業施設には、撤退した大手総合スーパーが戻り、入居者や近隣の住民の買い物の利便性向上に貢献しています。

既存資料をもとに当社にて作成
当社は、PPP事業について全国で多くの実績を有しています。遊休公有地の利活用についても、LABVの推進を含めて、誰もが安心して住み続けられる、持続可能で活力ある地域づくりのために貢献していきたいと考えています。