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持続可能な社会へのトランジションに向けて

~パシフィックコンサルタンツが提供する統合的なサービスを通じた貢献を~

持続可能な社会へのTransition(トランジション=移行)が世界共通の課題となる中、Climate Change(気候変動)とNature(自然資本・生物多様性)への対応の重要性がますます高まっています。
本稿では、当社がこれまでこの2つの分野とどのように向き合ってきたかご紹介すると共に、持続可能な社会の構築に向けて今後さらにどう取り組むべきか考えてみたいと思います。

国政策検討(トップダウン)から地域実装(ボトムアップ)までを長年カバーしてきた、総合建設コンサルタントとしては稀有な存在

 総合建設コンサルタントである当社が環境分野に取り組み始めたのは、今から30年以上前のことです。気候変動分野では1990年代から国の地球環境問題の調査研究支援を始め、1997年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)では環境省の事務局支援を行いました。その後も国の気候変動緩和/適応政策に加え、環境アセス制度、資源循環政策、グリーンインフラ政策へとその支援領域を拡大していきました。

 2010年には、緑の分権改革や地方創生の推進に加え、当時のエネルギーを中心としたスマートシティ構築に対応する新組織を設置し、当社の強みである全国自治体との繋がりを活かしつつ、都市と地方の環境エネルギー分野での連携をコンセプトとして、国政策の実装に向けた活動を進め始めました。

 このような実績・経験を有する当社が、持続可能な社会へのトランジションの実現に向けて、気候変動と自然資本・生物多様性にどう取り組むべきか、その考え方の一例をご紹介します。

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国の政策・計画策定支援から社会実装支援・自社事業展開まで、トップダウンとボトムアップの両方に対応
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当社が考える都市と地方の連携イメージ(2010年作成)

カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み 
-気候変動緩和策の実装-

 カーボンニュートラル(CN)に向けては、国際的な動向や国内の脱炭素・エネルギー政策を踏まえつつ、具体的な技術的対応としては、①省エネの徹底、②エネルギーのカーボンフリー化、③エネルギーマネジメントの最適化、④オフセットクレジットの適用等に取り組む必要があります。これは自治体でも民間企業でも同様です。

 一方で、国のGXに向けた基本方針や金融の世界が着目するESGの文脈では、産業・社会構造自体の転換や企業の地域貢献が重視されており、その意味では、単に地域や企業の脱炭素化を技術的に解決するという視点だけでなく、脱炭素化が地域や企業のさらなる繁栄にもつながるという全体ストーリー構築や経済性担保、体制構築が必須です。

 当社は、国内では脱炭素先行地域の支援や企業CN化の支援、グループ会社であるパシフィックパワーの自治体新電力運営を通じたエネルギー事業体としての経験、さらに海外では二国間クレジット制度(JCM)案件形成等の経験を有し、上記のような脱炭素化と経済社会発展との融合を常に支援してきました。

 このような背景を踏まえ、当社が考える取り組みの方向性は以下のとおりです。

・地域や企業の脱炭素化と地域や企業が抱えるその他の諸課題(レジリエンス強化、産業の活性化、人口や雇用の増加等)の同時解決を可能にする全体の絵姿(事業構想)を描く。

・絵姿の実現に必要な、より詳細の事業計画、技術的手法、資金調達策、推進体制等を、関係ステークホルダーの合意形成を着実に図りながら具体化する。

・特に国内では、マイクログリッド※1など自立分散型のエネルギーマネジメント技術の導入と共に、脱炭素化や地域課題解決の推進力となりうる事業体として自治体新電力を積極的に活用し、事業の永続性を担保する。

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分散型エネルギーシステムの概要
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むつざわスマートウェルネスタウン

水災害・水資源等のリスク低減に向けた取り組み 
-気候変動適応策の実装-

 気候変動適応策は、食料、水資源、災害、生態系、健康・保健等、様々な分野に及びますが、中でも人命に直結する河川水害・高潮被害・土砂災害等の災害対応は喫緊の課題です。

 当社は、例えば、流域治水プロジェクトに基づく計画策定や対策検討の豊富な実績があり、この技術・経験を活かし、国や都道府県だけでなく、流域内の個々の自治体や企業にも水害リスク評価と対応策をユーザエクスペリエンスデザイン※2で支援してきました。

 また、地域社会の水資源を守るために、流域の水循環分析や気候変動による流況への影響予測分析などを行い、水資源の有効活用や節水促進、水質改善などに貢献してきました。

 このような背景を踏まえ、当社が考える取り組みの方向性は以下のとおりです。

・水災害について、グローバルスタンダードの評価ツールでは捉えきれないミクロスケールのきめ細かな水害リスク評価や、IoTを活用した各種防災ツール・システムを活用する。

・水資源について、気候変動に伴う空間的かつ時間的な水資源の偏在化を視野に入れ、安定した利水・環境保全のための適切な水資源管理(マネジメント)を導入する。

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水循環を意識した水災害・水資源等のリスク管理のイメージ

ネイチャーポジティブに向けた取り組み 
-生物多様性保全策の実装-

 企業活動や経済活動は、生物多様性や生態系に大きく依存しており、同時にこれらの利用が生態系へ大きな影響を与えていることから、2023年10月に本格始動するTNFD ※3や SBTs for Nature ※4といった新たな枠組みが立ち上がる等、自然資本や生物多様性への企業や金融界の関心が高まっています。この分野は、 CN化のようにGHG排出量という統一された指標がないということも注目すべきポイントです。

このような背景を踏まえ、当社が考える取り組みの方向性は以下のとおりです。

・企業活動や経済活動と生物多様性の

関係性は、操業地や調達先のみならずバリューチェーン全体に及ぶものであるため、生物多様性の特性である固有性や地域性の観点に注目した適切かつ柔軟な把握・評価手法を活用する。

・生物多様性は地域の社会課題とも密接に関係していることから、生物多様性に関する取組をそれらの社会課題の解決の手段として位置づける「自然を基盤とした解決策(Nature-based Solution、NbS)の概念に注目する施策を展開する。

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ネイチャーポジティブ推進⽀援サービスの概要

持続可能な社会へのトランジションに向けて

 持続可能な社会へのトランジションに向けては、行政・地域・企業の連携と事業化、投資家に対する企業の情報開示といったように、多様なステークホルダーとの共創やコミュニケーションが求められます。

 私たちは、社会インフラシステムの整備における長年のコンサルティングや実事業の運営・参画により、包括的なアプローチを可能にする「確かな専門性」を蓄積してきました。気候変動と自然資本・生物多様性の2つの分野の網羅性と専門性が当社グループの独自性となっています。そして、私たちの海外担当部門であるグローバルカンパニーとの連携により、日本国内だけでなく海外における顧客ニーズにも応えられるものとなっています。

 私たちは、社会や顧客のニーズに応じた「統合的なサービス」を提供することを通じて、持続可能な社会へのトランジションに貢献し続けていきます。

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※1 マイクログリッド:
再生可能エネルギーを中心としたエネルギー供給源と需要施設を一定の範囲でまとめて、エネルギーの地産地消と防災力強化を目指す仕組みのこと。

※2 ユーザエクスペリエンスデザイン:
製品、システム、サービスの利用を通じて、ユーザーが得るすべての顧客体験を設計すること。

※3 TNFD:
民間企業や金融機関が、自然資本及び生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的な組織である自然関連財務情報開示タスクフォース。2023年9月に情報開示に関するフレームワークが公表予定。

※4 SBTs for Nature:
バリューチェーン上の水・生物多様性・土地・海洋が相互に関連するシステムに関して、企業等が地球の限界内で、社会の持続可能性目標に沿って行動できるようにする、利用可能な最善の科学に基づく、測定可能で行動可能な期限付きの目標。

井上 裕之

Inoue Hiroyuki

社会イノベーション事業本部
グリーン社会戦略部 室長

企業のサステナビリティ推進全般の検討支援、地域と連携したエネルギー関連事業化支援に関するコンサルティングに従事。

池田 啓造

Ikeda Keizou

社会イノベーション事業本部
グリーン社会戦略部 課長補佐

企業のサステナビリティ推進に向け、主にカーボンニュートラル化に向けたロードマップ検討に関するコンサルティングに従事。

中川 考介

Nakagawa Kosuke

社会イノベーション事業本部
グリーン社会戦略部 主任

企業のサステナビリティ推進に向け、主に生物多様性・ネイチャーポジティブ対応に関するコンサルティングに従事。

松田 浩一

Matsuda Koichi

国土基盤事業本部
河川部 室長

ハザードマップ、流域治水等に関する河川計画策定全般に関するコンサルティングに従事。

古川 正修

Furukawa Masanao

国土基盤事業本部
地盤技術部 チーフコンサルタント

地下水の保全管理(広域マネジメント)検討、水リスクに関するコンサルティングに従事。

飯田 進史

Iida Shinji

デジタルサービス事業本部
防災事業部 室長

国・自治体・企業のリスク診断、防災戦略・計画策定、BCP・BCM検討、研修・訓練支援、情報システム構築に関するコンサルティングに従事。

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