2021.12.13
パシフィックコンサルタンツが挑む自律型組織への変革(前編)
1on1ミーティングの導入
概要
1on1によって自律型人材を育て、変化に強い組織へ(前編)
1on1導入のきっかけ:D&Iの「I」(愛)が足りない。組織内の多様性を活かすための1on1 (後編)
業界のリーディングカンパニーとして成長を続け、創立70年を迎えたパシフィックコンサルタンツは、変化の時代に対応していくために自律型人材の育成を進め、その方法のひとつとして1on1ミーティングの導入を進めてきました。
前編では、1on1ミーティングの導入サポートを行っていただいた、ビジネスコーチ株式会社の取締役副社長 橋場 剛氏にインタビュアーを務めていただき、当社で1on1を導入する背景や文化として根付いた先の未来について、代表取締役 社長執行役員 重永 智之および代表取締役 専務執行役員 大本 修に話を聞きました。
写真左:ビジネスコーチ株式会社 取締役副社長 橋場 剛氏、写真中央:パシフィックコンサルタンツ株式会社 代表取締役 社長執行役員 重永 智之、写真右:パシフィックコンサルタンツ株式会社 代表取締役 専務執行役員 大本 修
1on1によって自律型人材を育て、変化に強い組織へ
橋場氏:建設コンサルタント業界を取り巻く現況や課題、その中での貴社の取り組みについてお聞かせください。
重永:建設コンサルタント業界は、インフラのものづくりのための調査や計画・設計を主務としてきました。しかし現在ではそれらに加え、社会インフラができあがった後の維持管理や事業運営にも私たちの役割が広がっています。当社においても空港や道の駅の運営に携わったり、頻発する自然災害に対応した情報提供のあり方を検討したりと、対応領域が拡大し続けています。上流のプランを描くだけでなく、オペレーションを実際に手がけ、その知見をもとにプランを磨き上げていくことが求められている。いわば、建設コンサルタントという仕事の意味合いが変わってきているのです。
大本:直近では新型コロナウイルスの流行もあり、業界全体がさらに大きな変化の時期を迎えています。これからの世の中がどうなっていくのかは予測しづらいものですし、これまで以上に大きな変化が起きることも十分に考えられます。
橋場氏:建設コンサルタントのあり方が変わる中、組織・人材戦略においてはどのようなことを重視していますか。
重永:一人ひとりの個性を踏まえた、新しい人材育成の形が必要だと考えています。私たちが若手だった頃は、作成した図面が真っ赤に直されたことが度々ですが、先輩から仕事の方法や礼儀など、直接教えてもらうことはほとんどありませんでした。ひたすら先輩たちの後を追いかけて仕事を覚えたものです。しかし今は「背中を見て覚えろ」では人は育ちません。一人ひとりに合った育成の方法を考え、実践していかなければなりません。
大本:加えて、技術が属人化しないよう、全社で共有するための仕組み作りも重要になります。私たちは技術で評価される会社です。現在は技術自体が高度化・細分化しており、特定の人材に知識やスキルが偏りがちな状況。さらに、実績も受注につながるので、属人化しやすい部分があります。そのため技術の共有化を進める必要があるのです。
重永:こうした課題に対応するため、現在はナレッジマネジメントを推進しています。コロナ禍では新入社員に対面で仕事を教えることもままなりませんでした。これを機に、一定レベルまで社員が自律的に学ぶことのできるテキストや資料をもっと整備しなくてはいけないと思ったところです。
橋場氏:自律的な人材を育成していく上で、1on1の取り組みは大きな意味を持っていると思います。1on1の文化を社内に根付かせることで、どのような変化を期待していますか。
大本:おっしゃるように、社会の著しい変化に対応していくためには、お客さまや上司に言われたとおりではなく、自律的に考え、判断できる人材が必要です。一方で上司から部下へは指示命令のコミュニケーションスタイルが基本で、上司と部下が互いを深く理解し合いながらじっくり話す場はあまり持てていませんでした。
重永:経営陣の意思を伝えているつもりでも、部門や社員個々人には伝わりきっていないのではないか。そんな課題感も持っています。また、社員から経営陣への提案がマネジメント層で止まっていたり、正しく伝わっていなかったりするのも事実です。1on1にはこうした現状を変え、上下のコミュニケーションを活発化させていくことも期待しています。
橋場氏:社員のみなさんの自律を妨げてしまう要因はどこにあるのでしょうか。
重永:昔と比べて、今の社員は予算の裁量や自由度が小さく、増え続けるルールに縛られてがんじがらめになってしまっているのかもしれません。
大本:当社にはもともと自由闊達な風土があったのです。しかし、世の中全体でコンプライアンスやガバナンスの意識が高まる流れに合わせて、規定やルールがとても多い会社になってしまいました。極端に言えば、絶対に守るべきことを除いて規定やルールを取っ払い、基本的には社員を信用して自らの頭で考えて動いてもらうようにしていくべきではないかと思っています。今は「自律できていない前提」でルールが決められている。こうした構造を改革していくことも、私たち経営陣の重要ミッションだと捉えています。
橋場氏:1on1ミーティングの文化を浸透させた先に目指す状態をお聞かせください。
重永:一人ひとりが自分の判断で行動し、それが結果的に会社全体の成長につながっていく状態にしたいと考えています。掲げた目標にみんなで向かっていけば効率が上がる時代は終わり、今は、目指すべき目標が明日にも変わってしまうかもしれない時代です。みんなが自律的に、さまざまな考えを持って仕事をしていて、大きな変化のときにも柔軟に軌道修正できる。そんな組織になりたいですね。
大本:そのためには1on1の場を活用して、言いたいことや思ったことを積極的に伝えてほしいと思っています。社員には遠慮せず、いろいろな話を上司に話してほしいし、それができる会社だと信じています。
◆パシフィックコンサルタンツが挑む自律型組織への変革(後編)に続く
※この記事は、ビジネスコーチ株式会社の事例紹介に掲載された記事を一部抜粋したものです。
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