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2021.03.22

「ポストコロナにおける都市・地域の展望」第2部 パネルディスカッション

パシフィックコンサルタンツ・日建設計共催イベントを開催しました

2021年2月18日、パシフィックコンサルタンツと日建設計は共催イベント「ポストコロナにおける都市・地域の展望」を開催、渋谷駅周辺など東京都心部の駅まち一体開発(TOD)で、都市が抱える課題解決に共に従事してきた2社が、ポストコロナにおける都市・地域に求められる変革の方向性を発信しました。
第1部は、両社の若手・中堅ワーキングメンバーの共同研究に基づき、「都市・地域に求められる変革、これからの社会デザイン」に関する提言を行いました。建築・都市・社会基盤などの専門領域を超え、さらにエネルギーやスマート化など多角的な視点を踏まえ、8つのテーマでこれからの自律分散型都市像について発表しています。
第2部は、パシフィックコンサルタンツの重永智之(代表取締役 社長執行役員)と日建設計の大松敦(代表取締役社長 社長執行役員)、そしてモデレーターはロフトワークの林千晶(代表取締役)の3名によるパネルディスカッションが行われました。渋谷駅前開発で協働してきた2社のまちづくりに対する眼差しから話は始まります。

ロフトワーク代表・林氏の進行による両社長パネルディスカッション

【ワークスタイルは多様化し、職場はコミュニケーションの場に】

林:なぜ日建設計とパシフィックコンサルタンツの2社が、ポストコロナの共同研究を始めることになったのでしょうか。

重永:日建設計とは、渋谷駅前開発で、20年近く前からコラボレーションをしてきました。東急東横線の地下化に端を発し、鉄道の付け替えや周辺エリアの再開発など、複雑なプロジェクトです。お互いに「都市をどのようにつくるか」をテーマに掲げ、建築・土木の枠を超えて取り組んできました。ポストコロナについても共に考えようと研究を始め、発表の場に至りました。

大松:渋谷では、初期段階から、どうすれば魅力的で皆に愛されるまちにできるかという課題を共有してきました。コロナで社会が大きく変わろうとしている今、これからの都市や地域の変化の方向性について、協働することで視野を広げて検討できると思いました。

林:コロナで都市や地域の何が変わったとお考えでしょうか。

大松:第一部の提言でもあったように、まずは働く場所が大きく変わりました。人の移動範囲が変化し、都心と家の往復だけでなく、自宅の周辺での生活時間が増えています。

林:働く場所が自宅に移行するのはよいことなのでしょうか。また、コロナ収束後はどうなるのでしょうか。

大松:ブレインストーミングや若手の社員育成など、会社で顔を合わせてやったほうがよいこともありますし、リモートでもできる仕事もあります。そうしたことがコロナによって明らかになってきた。働く場所は、家や会社に限らず、最寄り駅周辺のシェアオフィスなど、可能性がどんどんと広がっているので、ワークプレイスが会社だけに戻ることはないと思います。

重永:ワークスタイルの多様化が、コロナ禍で加速しました。弊社にもテレワーク制度があったものの、これまではほとんど使われていませんでした。でも、育児や介護などを抱える人は、会社に通勤するより自宅やその近くで仕事をした方が効率は上がります。今後の社会を考えると、テレワークやオンラインなどのツールを用意していくことが重要だと思います。

林:今後、会社は働き手にとってどのような場所になっていくのでしょうか。

大松:本社がなくなることはないと思います。みんなで楽しく議論できるラウンジがあるなど、社員のアイデンティティや拠り所、組織のDNAを継承するものとして必要だと思います。

重永:人間はコミュニケーションを必要とする動物なので、そこは大事にしないといけません。また、弊社は公共事業が多いため、やや堅い社風があります。図面を印刷するなどの物理的な制約もあり、すべてテレワークで出来るわけではありません。ただし、従業員の数だけ机と椅子を用意しなければならないということはなくなると思います。

大松:仕事では直接のコミュニケーションが大事だというのは同感です。渋谷駅周辺開発でも、関係者と週に何度も対面の会議を重ねることで、お互いの役割分担などをうまく決めることができたと思います。

日建設計 大松社長執行役員

【自律分散型で、ユーザーのニーズに適したまちへ】

林:第一部の提言では、道を公共空間として多目的に利用するパブリックスペースの構想がありました。公共空間の利用提案や、それを担っていく主体は、今後どうなっていくのでしょうか。

大松:これまでは行政がつくり管理してきたけれど、利用者オリエンティッドで、ニーズをくみ取れる仕組みができるとよいと思います。渋谷区立北谷公園では、日建設計など民間数社で、再整備と管理をする仕組みをつくりました。民間がより自分たちにフィットした公共空間を運営していく事例は今後増えると思います。

林:スマホのアプリなどを使って、提案などすることが今後可能になってくると思います。都市空間とアプリが今後より密接なものになっていく可能性もありますよね。

大松:そうですね。クラウドファンディングも増えているので、そういう仕組みを公園に活かすことができる日はそう遠くないと思います。アプリに関しては、どこにどれだけの人がいて、どういうアクティビティがあるかなど、オンタイムで把握し、情報を利用することが可能になっていくでしょう。

重永:人の動きをダイナミックに把握できれば、よりよい空間づくりにつながっていくと思います。昨年12月よりソフトバンク株式会社と協業で、人の移動に関する「全国うごき統計」という統計データを作成しました。人がどういう交通手段や移動経路をつかっているか、推定できるもので、有償で提供しています。それを利用すると、移動する人の目的や必要な施設がわかり、インフラのデータをふくめて、都市空間にフィードバックしていくことができると思います。

林:地方の公共空間は今後どのようになっていくでしょうか。

重永:地方に限ったことではないですが、防災の視点をもって公共施設をつくることが必要になると思います。例えば、弊社が運営する千葉県睦沢町にある「道の駅むつざわ つどいの郷」や町営住宅などからなる「むつざわスマートウェルネスタウン」は、天然ガスを利用したコージエネレーション・システムを導入して温浴施設と住宅にマイクログリッドで電気を供給しています。2年前の台風15号で周りが停電になったときも、ここだけ電気が供給でき、脚光を浴びました。

大松:エネルギーの地産地消ですね。

重永:これまでは、遠い発電所から送電線を張り巡らせていましたが、送電ロスもありますし、小型の風力発電なども可能になっているので、エネルギーは自律分散化していくと思います。

大松:一極集中を支えるための生産拠点が地方にある都市構造ではなく、自律分散化が必要ということですね。物流についても、あるエリアでつくった方が安いという経済合理性だけだと、交通網が機能せずに物流が滞ったときに不便になる。それがコロナで明らかになりました。

林:これまではGDPがひとつの指標でしたが、国民総幸福量(GNH)など重視する方向に向かうのでしょうか。

大松:われわれは建築や都市をつくることで社会をよくしていこうとしているので、その成果と直結する指標が出てくるとよいと思います。

重永:最近の言葉でいうと「豊かさ」かもしれませんが、その指標は多様化しています。そうした流れの中で、日本が住みやすい国であることを目指していきたい。そのために「まち」が非常に大事で、どんなかたちでつくっていくかを真剣に考える必要があります。

パシフィックコンサルタンツ 重永社長執行役員

【持続可能で多様性のあるレジリエントなまちへ】

林:日本は防災先進国だとよくいわれますが、防災・復興などこれまでに蓄積された知見を教えてください。

重永:日本は災害がとても多いですが、すべてを受け止めてリスクをゼロにしようとすると、ものすごく巨大なものが必要になりますから、真っ向から受けとめるより、横にスルッと逃がすように共生していくしかありません。東日本大震災後の復興でも、なるべく過剰防備にならないまちを目指しました。そのときに、これまでの縦割りを超えた連携がキーワードになります。例えば、堤防は河川行政でつくるものですが、その先にはまちがありますから、河川行政と都市計画は一体で考えるべきです。ようやくそういった取り組みが始まったと思います。
また、公共空間利用にも通じますが、平時は民間が有効利用し、災害時は防災拠点として機能するように整備をする方向も見えてきました。

大松:想定外の災害からすべてを守り切るというのは難しいので、やはり減災・防災のために何を守るか、しっかりした合意形成が必要になっています。

林:守るもの、守らなくてもよいものはどのように仕分けされるのでしょうか。

大松:当然、人命は守らなくてはなりません。それ以外に、例えば東京であれば、首都が果たしている機能を守る必要があります。そのためには、機能をいくつかの拠点に分散しておけば、仮に都心が被災しても、世界にその状況を発信したり支援を受け入れる窓口機能などは働き続けます。

重永:東京には行政や金融など守るべきさまざまな機能があります。それが被災で機能を失うと大混乱になりますから、まちのBCPを考える必要があります。
首都以外でも、災害に備えた耐力が必要です。まちごとに、最低限守るべきものは何かという議論を地域ごとに具体的にしていくことが重要です。

林:これまでは一極集中が効率的だとされ、仕事もオフィスに集まることで成果が上がると思われてきました。分散化が可能になったのは、新しい技術によるものでしょうか。

大松:技術によるところもありますが、目指す社会像が変わっていると思います。
われわれはバブル経済の崩壊を経験し、その前後で社会が目指す方向が明らかに変わりました。それと同様な変化がコロナを経て今後起こると思います。

林:コロナ後、ECが伸びています。さまざまなものがデジタル化・クラウド化すると、快適な場所、好きな場所ということが重視され、選択されていくことになるのでしょうか。

重永:コロナで人の動きが変わると、都市にも順応力が必要になると思います。そのためには、おっしゃるようにIT技術も必要です。もうひとつは、独自力が必要だと思います。今は全国どこにいっても似たつくりで、同じようなお店があります。都市の特性を踏まえたまちづくりを考えていく必要があります。都市間競争で、それぞれの個性を体験できるまちができていくと思います。

大松:これまで一色だった都市がカラフルになってくるイメージだと思います。

林:最後に一言、本日の〆の言葉をお願いいたします。

重永:やはり人と人のコミュニケーションが大事ということに尽きると思います。そのためのまちづくりを今後もやっていきたいと思います。

大松:今日は想像していた以上の可能性を感じることができました。参加してくださった方々も含めた共創で、魅力的な新しい社会をつくっていきたいと思いました。

当日ご紹介できなかった質問(Slido)への回答

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