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2018.02.28

座談会「環境DNA最前線」

環境DNA分析の魅力と可能性

今、環境分野で注目を集めている、生物の新しい調査手法である「環境DNA分析」。パシフィックコンサルタンツでは業界に先駆けて環境DNA分析の将来性を見込んで、研究者と共同で技術開発に取組んできました。 今回は、研究者の方々と共に、環境DNA分析の魅力や可能性について語っていただきました。

座談会の参加メンバー

<写真上段左から>
神⼾大学大学院 人間発達環境学研究科 准教授 源 利⽂氏
兵庫県⽴大学大学院 シミュレーション学研究科 准教授 土居 秀幸氏
島根大学生物資源科学部 生物科学科助教 高原 輝彦氏
<写真下段左から>
パシフィックコンサルタンツ株式会社 池田、上月、真木、渡部

"環境DNA"の魅力

高原助教:私は源先生に出会って2010年くらいから環境DNAの研究に関わり出したのですが、早くも2012年には論文が出せました。素人であっても、良い指導者がいれば、比較的短期間でも良い仕事ができるという魅力的な世界だと思っています。学部生でも優れた成果をあげる可能性があります。

土居准教授:高原先生が最初に書いたコイの論文は、環境DNAの世界ではすでに定番になっていて、多数の論文で引用されていますよね。

源准教授:すでに200件近く引用されていたと思います。

渡部:DNAに関する応用研究は、1980年代から今日まで急速に進んできたわけですが、それでも、DNA分析の技術というものは専門的なバイオ関連や医療、研究者の領域であって、その技術を自ら利用することなど、我々門外漢にはあまり考えられなかったと思います。それが、環境DNA分析が登場することによって、我々のような研究者ではない一般の人が、何かに利用できないか、と考えられるくらいDNA分析の世界がぐっと近づいてきたと感じています。

源准教授:そういう意味では、環境DNA分析は非常に分かりやすいということが魅力だと思っています。川の水を一杯取ったら、生き物のDNAがある。それによってそこにどんな生き物が生息しているのか分かるかもしれない、というすごくシンプルな話ですから。

環境DNA分析の課題と環境DNA学会

土居准教授:環境DNAは採取方法が比較的簡便なので、研究成果を社会で活用すること自体にはコストがあまりかからないというメリットがあると考えています。分析する機械も比較的安価ですから、世の中で活用を進めることは、他の技術に比べても容易にできると思っています。ただ、簡単に活用することができるからこそ、つき詰めて考えなければならないことが沢山あるとも考えています。環境DNA分析をやろうと思ったら、機械を買ってサンプルを集めたら誰でもできてしまう。でも、その結果として、出されたデータの中にはコンタミ(コンタミネーションの略称。実験汚染、異物混入の意味)や同定(生物個体を既存の分類体系に位置づけ、その種名を明らかにする作業)の誤り、誤検出なども沢山でてくると思うんです。そのため、分析そのものは簡単だと思いますが、社会での活用にあたっては注意すべきことは多いですね。

池田:環境DNA学会が立ち上がるというのが、2018年1月30日付けの読売ニュースに出ていましたがその意図はなんですか?

土居准教授:環境DNA学会では環境DNA分析をする際のマニュアルをきちんと作った上で、その啓発を行うことや、研究成果の発信をしたいと考えています。環境DNA分析の研究成果を社会に還元していくために、研究者主体の組織をつくり、ある程度一元化したマニュアルを作り、レクチャーをして啓発を行うことによって、コンタミや誤同定、誤検出といった問題を一定程度は解消できると考えています。

源准教授:マニュアル化する際には、最初は研究者がたたき台となるものを作りますが、それを事業者側が発注する上で使いやすいものになっているのか、現場の人が使いやすいものになっているのか、ということを様々な立場の方からフィードバックを受けて、ブラッシュアップしていくというサイクルを回せたら良いなと考えています。基本的に、研究者は面白いと思っていることしかやらないですから、環境DNA分析を社会で活用する場面で必要となる事柄については、やはり現場を知っている人、実際に使う人からの情報が必要だと考えています。研究者は基礎研究を確立しつつ、現場のニーズをフィードバックして社会で活用できるようにする。そういうサイクルが必要だと考えています。

池田:世界的にみて、他の国では環境DNA学会に相当するものはあるんですか?

土居准教授:調べた限りでは、海外ではまだないようです。そのため、今回立ち上げた環境DNA学会の英語名にはJapanは付けず、「The eDNA Society」としました。

環境DNA分析の可能性

─例えば、今まで分からなかった絶滅危惧種の生息状況を簡便に確認することができるというのは、環境DNA分析技術の強力な能力の一つと言えると思います。ただ、絶滅危惧種の生息確認は環境保護や生態学といった観点からは意味のあることだと思いますが、一般の方にとってはさほど関心が高くないことかもしれません。一般の方にとって、環境DNA分析技術が役立つものだ、と感じられる活用方法としてはどんなことがありますか。

源准教授:確かに、そういうことを言われるのは分かります。ただ、ここにいる3人はいずれも生態学者です。どこに何が生息しているのかという、今まで分からなかったことが分かるだけでもすごいことだ、と考えています。私たちにとって研究は、かならずしも"すぐに社会に役に立つ"ことが目標ではなく、まずは誰も分からなかったことを解明することが目的としてあります。その結果として、環境DNA分析には色々な使い道があるだろうなということも、もちろん想像できますが、まずは基礎的な技術を確立することが研究者の役割として大切だと考えています。

応用可能性としては、例えば、環境ということだけではなく、食や医療といった切り口での使い道もあると思っています。食に関しては、例えば、ある場所で水産資源量を増やすための対策をしたときに、その場所の水産資源の量や魚介類の種類が増えていることを環境DNA分析によって確認できれば、それはすごいと思います。医療の面では、例えば住血吸虫という水を介する感染症があります。海外では、まだまだ、そうした感染リスクのある川の水を使って生活せざるを得ない場所も多いわけですが、その水が安全かどうかということが環境DNA分析で容易に分かることができれば、感染症になるリスクを減らすことができます。他にも、生物多様性を保全するということでも、これまでにない規模で多様性を把握することが可能な技術として活用できると思います。環境DNA分析の応用方法はいくらでもあると思っていて、それはまさに使い方次第です。

パシフィックコンサルタンツと環境DNA

渡部:当社が環境DNA分析の業務応用に取組み始めたのは、ある日、「水を汲めばそこに生息している生物を確認できる」ということが書かれている論文を発見して、著者である源先生に、いわば半信半疑で話を聞きに行ったのがきっかけです。2013年頃でしょうか。話を聞いて、「環境DNA分析の技術はこれから伸びる」と考えて、早速、取組み始めたんです。

真木:当社が源先生の協力を得ながら、雄物川の業務で環境DNA分析を使えないかということで、発注者に提案したのは2014年度でした。やはり最初は、色々な反応がありました。
まずは、DNA分析の基礎知識がない発注者に、環境DNA分析の理屈を説明すること自体に壁がありましたし、国内で本格的な利用事例が無い中で、環境DNA分析を使うメリットを説得するのも一苦労でした。結果的には、本川で探していた希少種を10年ぶりに発見することができて、環境DNA分析の威力を発注者にも、アドバイザーの先生にも納得していただくことができたわけですが。

上月:土居先生にご協力いただき、野洲川の業務で実施したメタバーコーディング分析による魚類相の検出力は想定を超えたもので、環境DNA分析の可能性を実感することができました。一方で、発注者からは、検出されるDNAが、どの程度の範囲に生息する個体に由来するのか?どれくらいの時間、残存しているのか?という、現在でもはっきりと答えられない本質的な疑問を突き付けられました。その時は、国際的にも僅かな事例のレビューをして推測を述べることが精一杯で、基礎的な知見が足りていないと感じたのも事実です。

真木:環境DNA分析が公的な技術になるためには、誰がやっても同様な結果が得られる技術であることが必須条件だと思いますが、現在、採水からDNA分析にいたるまでの手法について公的なマニュアルが存在していないことは、大きな課題だと感じていました。水を汲むタイミングなど、基礎的な技術的な問題で、本当はDNAが検出されるはずなのに検出されなくて、その結果、「環境DNA分析は使えない技術だ」ということになると非常にもったいないことですよね。

源准教授:環境DNAは最初の論文が出されてからまだ5年くらいしか経っていないんですよ。それが、今、ここまで来ているのは少し速すぎるとも思っています。水を汲んでDNAを測ったら、何がいるか分かるんだよと言われれば、なるほどそんなことできそうだなと思う。そこはすごく簡単で、研究者ではなくても参入できそうだなと思えるんですよ。ただ、誰でもできそうなだけに、ルールを決めないといけない。

池田:そんな中で環境DNA学会が創設され、環境DNA分析のルール作りをリードすることになるわけですね。基礎研究を進められている研究者の方々と、その技術を活用していこうとしている私たちとが良いコミュニケーションをとりながら進めていくことが益々大事になると思います。考えています。

秋⽥県の雄物川。パシフィックコンサルタンツは、環境DNA分析手法と採捕調査を組み合わせることにより、絶滅危惧種IA類のゼニタナゴの繁殖地を確認した。

パシフィックコンサルタンツに期待すること

源准教授:パシフィックコンサルタンツさんには、自然環境をよく知っている人がいますよね。地域の生物の色々な分類群についても本当によく知っておられるし、そういう意味で調査のプロですよね。私たちは、技術は持っているけれども、それぞれの場所のそれぞれの生き物をそこまで知っているわけではないので、一緒にやってもらえると、とても良いマッチングになると思っているんです。

土居准教授:パシフィックコンサルタンツさんは、我々のグループと一緒に活動を始めた最初の企業です。その中ですでに一緒に論文を3つも出しましたし、今後も様々なことを一緒にできればと思っています。

高原助教:私のいる島根県は環境的にも特異ですし是非、島根からの環境DNAの発信ということも今後一緒に取組んで欲しいと思います。

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