事業紹介箕面(みのお)トンネル建設プロジェクト[大阪府]

5㎞を超える長大かつ日本最大級超大断面トンネルへの挑戦

大阪府北部は、隣接する兵庫県南東部とともに、都市部への通勤圏内にある。交通は、大阪府北部から都市部へ通じる国道423号に集中し、その混雑振りは激しく、しかも日常化している。こうした中にあって、この交通混雑を緩和し、さらに現在箕面森町に整備中の「水と緑の健康都市」へのアクセスを目的として、箕面有料道路が計画された。この道路は国道171号萱野交差点を起点とする、全長7.2㎞の自動車専用道路であり、長期的には新名神高速道路への接続も予定されていた。
箕面トンネル建設プロジェクトは、この箕面有料道路のうち、箕面市白島から下止々呂美(しもとどろみ)までの間の5㎞を超えるトンネル造りである。大阪府道路公社が中心となってプロジェクトは進められ、平成10年度に山岳トンネル築造工事に着手し、平成19年度に無事供用を果たしている。
本プロジェクトは、今までに事例の少ない5㎞を超える長大トンネルであること、また箕面市白島側南坑口においてトンネル内でのランプ合流を行うことから、日本国内における最大級規模の山岳工法による超大断面トンネルの実現が課題であった。そのため、本プロジェクトの成功に向けては、弊社の技術力が大きな鍵となった。

未固結土砂地山における前代未聞の超大断面

本箕面トンネル建設プロジェクトは、本坑5,523m、避難坑5,572m、換気立坑331m、それに地下換気所1箇所、管理事務所1棟、電気室1 棟、照明・換気・防災設備などで構成されており、弊社はそれら全体の計画、設計、施工管理ならびに一連の事業マネジメントに参画している。
このトンネルルートに分布する地質は、トンネル中央で二つの基盤岩類に大別される。南側は丹波帯とされており、中生代の丹波層群と呼ばれる砂岩、頁岩を主体とした堆積岩類である。一方、北側については超丹波帯が分布すると考えられており、大部分が砂岩で構成されていた。このうち南側坑口部においては、未固結な大阪層群の分布に加え、有馬高槻構造線の北縁断層群にあたっていた。また、基盤岩である頁岩も如意谷断層等の影響を強く受け、全体的に細片化が著しいものであった。
箕面有料道路は、道路計画の上では自動車専用道路として新御堂筋本線(準高速道路)と直結させるとともに、国道171号と円滑に接続できるように計る必要があった。そのため、南坑口付近で本線とランプを一体とさせた掘割構造を採用した。そのままトンネル内へ移行させる形式であるため、南坑口から約 250m区間は大断面を有する拡大部として計画された。そこで、地上を走行してきた車が地下で合流する際の危険性を低減するため、暗順応を考慮してすり付け長を長めに確保した。
また、ランプ車線を含めた幅員構成の計画では、本線2車線(掘削断面積80㎡)にランプ車線を含めると道路の総幅員だけでも15m以上となった。そのため、山岳工法で構築する場合は内空断面積で200㎡超、掘削断面積では300㎡超の「超大断面」になった。
山岳工法による道路トンネルの大断面では、以前弊社が設計した新神戸トンネル・第二布引トンネルの事例がある。これは分岐部断面が掘削断面積 240㎡程度であったが、地山が新鮮な花崗岩であった。他にも地下発電所などの大断面(地下空洞)の事例もあるが、いずれも山の深部の硬質岩盤に建設されたものであった。これに対し、本箕面トンネルのランプが位置する南坑口部は、大阪層群の未固結地山(土砂地山)の砂礫・粘性土互層が分布している。したがって、このような脆弱地山において、掘削断面積が300㎡以上となる超大断面を構築することは、国内でも前代未聞のトンネル計画であったと言える。

南坑口超大断面施工時
南坑口超大断面施工時
本体構造完成時
本体構造完成時

掘削幅23mに対して許される変位量は、わずか10㎝

掘削断面積300㎡超という前代未聞の超大断面トンネル構築の際の問題点を具体的に挙げると、(1)超大断面の大きな切羽が自立するか、(2)大きな緩み荷重に耐えられる覆工の施工が可能であるか、(3)前記の荷重を地山が支持できるか、ということであった。
そこでまず、先行で施工した作業坑及び超大断面に到るまでの標準断面区間の計測結果を分析した。再現解析によって周辺地山の安定性を評価したところ、内空断面積が200㎡超、掘削断面積で300㎡超となる当該地山の大断面を山岳工法で施工するには、切羽の安定性を確保するために、内空変位量を10㎝程度以下に抑えることが必要であると判断された。
したがって、このような未固結土砂地山かつ超大断面施工の山岳トンネルを構築する場合には、加背を分割し、なるべく小さい断面で掘削することが基本であると考えた。一般的には上半先進工法が考えられるが、国内外も含めた施工事例やFEM解析を行った結果、側壁導坑先進工法を採用することとした。補助工法としては、注入式長尺鋼管先受け工法(トレビチューブ工法)を検討したが、超大断面の補助工法としては信頼性が低いため、支保効果が高いパイプルーフ工法を選択した。
また、施工時の掘削工法、支保構造、補助工法等を決定した上で、完成時のトンネル構造設計を検討した。緩み荷重に対する覆工構造は、全土被り荷重をかけた解析の結果、二次覆工コンクリートの部材厚は一般的な構造に比べて厚くはなるものの、鉄筋コンクリート構造とすることで対応が可能であると確認できた。
また、地盤支持力についてもFEM解析による検討の結果、支持力不足による沈下、上半脚部と下半脚部の共下がりの発生が懸念されたが、上半アーチ部の一次支保に作用する荷重を支えるために、側壁コンクリートを先行打設することで解決した。
このように、超大断面トンネルを未固結地山に構築するには大きな課題があった。しかし検討の結果、安全施工が可能であるという結論に達したため、超大断面区間は山岳工法で構築することを決断した。

地下水情報化施工システムの開発 ~SWING法~

箕面トンネルは、北摂山麓の一角を成す箕面国定公園を縦断する計画であった。そのため、「箕面滝」「勝尾寺」などの景勝地や、天然記念物である箕面のサル、オオサンショウウオなど貴重な動植物等に対する環境保全を考慮する必要があった。
まず「箕面滝」や「箕面川ダム」に関わる生活用水及び農業用水等の利用実態、さらに河川や沢水、湧水等の利用状態の調査を行った。すると、本プロジェクトの施工に伴って、周辺の水文に関する環境問題への対応が必要なことが判明した。そこで施工時から竣工後までの地下水への影響(地下水低下、沢水流量変化、トンネル湧水量など)を迅速に評価する予測法の開発に取り組んだ。その結果、解析手法としては従来の専用ソフトを用いずに、弊社独自の「SWING法(System on Water Information of Ground)」を開発し、運用をすることとなった。

竣工・供用の感動と技術者としての矜持

箕面トンネルは、数々の難工事を重ねながら、平成18年3月無事に竣工を迎え、平成19年5月から「箕面グリーンロード」として、供用を果たしている。

「トンネル技術者として、このようなビッグ・プロジェクトに関われることは技術者冥利に尽きます。それも弊社にいてこそ可能なのです。」(交通技術本部トンネル部長:安田 亨)
「都市NATMであり、かつ日本最大級の超大断面に対して、解析的手法を駆使した設計に加え、施工時の計測データの分析、再現解析により評価した情報化施工によって、無事に超大断面施工が完了しました。このことは、今では私のトンネル技術上の試金石となっています。」(トンネル部山岳トンネルグループ・リーダー:加藤友章)
「施工中、側壁導坑の底から11m上の天端部を見上げた時は、断面規模のあまりの大きさに圧倒されました。しかし、発注者や施工業者を含め、プロジェクトに関わる全員が一丸となって課題解決に取り組んだため、自信はあっても不安はありませんでした。」(大阪本社トンネルグループ:田近宏則)

上記3人の技術者の言葉に表されるとおり、弊社のトンネル技術は日本随一の実績を有し、公共事業におけるトンネル分野のシェアは日本一を誇っている。
この箕面トンネルの完成により、大阪府北部から発生する国道423号の交通渋滞は緩和され、亀岡市や水と緑の健康都市(箕面森町)へのアクセスが容易になった。さらに、今後計画されている新名神高速道路ICとの接続等により、関西圏の経済や文化の一層の発展に寄与することが期待されている。一本のトンネルが、新しい価値をもたらし、都市再生を可能にするのである。「弊社の作品が未来永劫、形になって残ります。私達の仕事が、社会に新しい価値を創造します。『このトンネルは、お父さん達が造ったんだよ。』と家族にも自慢しますが、正直あまり興味がないようですね。少し腹が立ちました。」と苦笑する。――何よりもこの言葉こそ、建設コンサルタントの仕事の意義を示していると言えよう。

南坑口超大断面完成時
南坑口超大断面完成時
南坑口完成時
南坑口完成時

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