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事業内容/実績期待されるLCA(ライフサイクルアセスメント)評価の可能性

期待されるLCA(ライフサイクルアセスメント)評価の可能性
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"循環型社会"を実現するために

LCAの活用で環境施策の実効性を高める

LCA手法による評価結果例

持続可能な循環型社会への転換を実質的にどう図っていくか、そのために環境施策の実効性をどのようにして高めるかが、これからの自治体運営における最大級の課題となっている。環境対策やリサイクルの推進を看板に掲げない自治体は今や珍しいが、実際には大きな負担も伴う。たとえばごみの分別収集品目を単純に拡大していくと、市民の分別排出の負担増、新規設備への投資と既存設備の稼働率低下、収集運搬経費の増大につながり、トータルコストと環境負荷を考えるときわめて効率が悪いという本末転倒な事態をも生みかねない。
次世代型の熱処理技術やバイオマス利活用など新しいキーワードも登場する中で、それらをどう組み合わせて全体像を構築していくのが地域にとって最適なのか。自治体はマスタープラン作成の段階で、廃棄物の発生から再生利用、最終処分までを統合的に「廃棄物管理システム」として捉え、将来におよぶ環境への影響を予測し、合理的な評価を行ったうえで、適切な選択をしようと努力している。
そのための有力なアプローチ方法として、最も注目されているのがLCA(Life Cycle Assessment)だ。
手法としてのLCAは目新しいものではないが、大学・研究機関をはじめ行政、民間企業などでの取り組みも進み、対象を拡大して廃棄物管理システム全体を評価できるまでに技術開発と実施事例が蓄積されてきたことに意義がある。

国内の先駆的事例となった京都市の廃棄物管理システム評価

弊社は経済産業省LCAプロジェクト成果の1つであり、国際的にも先進的と認知されるにいたった日本発の影響評価手法"LIME"の開発に参画。LCA技術の研究開発に取り組み、長年の廃棄物処理分野のコンサルティング経験をいかし、「LCAを用いた廃棄物管理の総合評価」を新しいコンサルティングサービスとして自治体に提供、継続的に実践を積み重ねてきた。
事後評価ではなくマスタープランの検討段階で、行政が廃棄物管理システムの比較評価を本格的なLCAで行ったという点で、京都市のケース(2002年~2003年)は日本での廃棄物LCAの先駆的事例に位置づけられるだろう。
「環境共生型都市を標榜する京都市は、家庭ごみの実態の継続的な基礎調査で知られるように、処理施設の環境モニタリング、新処理技術の調査、さらにはバイオガス化技術の実証実験などを通じ、多くの基礎データを広範囲に蓄積してきました。弊社は、それらのデータを連携させるかたちで将来システムの環境負荷を推計するモデルを構築し、統合的な評価を行う業務を担当しました。面識のある第一線のLCA研究者の方々から研究成果をお借りし、取り入れることができたのも幸いしました」

合併に伴うシナリオの見直しにLCAを導入

市町村合併によって広大な地域を市域に抱えることになった相模原市から、2005年、弊社に一般廃棄物処理システムの最適化調査が依頼された。
廃棄物処理は、われわれの生活の一部として、地域の特性を背景に時代とともに変化してきた。しかし、循環型社会を目指す今日では、時代を追って変化するのではなく、時代を先取りして変化させる必要がある。そのため、相模原市では、合併後の新しいごみ処理システムとして、「施設の再配置」、「ごみ処理有料化」や「戸別収集」の有無の組み合わせにより12個のシナリオをつくり、どのように環境負荷・コスト評価結果が異なるか、LCA分析による検討を行った。
そのために各評価値を重みづけして統合化する指標(LIME)を採用し、CO2やNOX排出量、埋立量などの環境負荷および処理コストから、12のシナリオの優劣を比較しやすくしてみせた。
このように相模原市の場合、LCAは具体的な施策に対してというより、長期的・政策的な視点に立って使用されており、将来の意思決定の指標としようというものであった。
「今この時点で『よい』と思われることが、自治体がやるべきこと、効果が上がることとは限りません。すでにできている施設が、ごみの縮小と比例して自動的に縮小できるわけではない。まずはいろいろなシナリオを立て、比較検討することに意味があるのです」
環境負荷や事業コストに対する価値観は自治体によってまちまちであり、1つに統一させることはできない。LCAはあくまで合理的な手法に基づき、自治体が住民らとともに考え、話し合い、納得のいく意思決定をするための"一判断材料"を提供するものである。

LCAの普及を加速させ真に持続可能な社会システムを

循環型社会構築への期待と廃棄物にかかわる環境影響への不安の高まりなどを背景に、自治体には合理的意思決定と説明責任が強く求められるようになり、LCAを用いて検討を行うことの重要性が増している。
「社会資本が一巡している現在の日本では、ハード単体の整備ではすまない。ドラスティックな施策は難しくなっています。既存の施設をいかしたり、従来の技術を向上させつつ、[環境負荷-コスト-事業運営]を一体化した廃棄物マネジメントの視点が必要になっています」
LCAは現在、世界各地で積極的に研究が進められ、技術的蓄積が着々と進んでいる。LCAは絶対的なものではなく、評価範囲や精度に一定の限界はあるが、ごみ量発生予測や収集運搬シミュレーションといったこれまでの弊社の保有技術に加えることで、持続可能な社会をつくるための有益な指標の1つとなるはずだ。
弊社は、LCA技術の調査研究と事業化の支援という、両方を担うことのできる数少ないコンサルタント企業として、日本の社会システムが循環型へと向かうプロセスをサポートしていく。