2010

印旛沼流域水循環健全化プロジェクト調査

印旛沼流域水循環健全化プロジェクト調査

新しいアプローチで地域に大きなムーブメントを

従来の対策に縛られず、新たな施策を展開

千葉県北西部、15の市町村にまたがる印旛沼は、県内の住民およそ100万人に飲料水を提供する貴重な「水瓶」。しかし、都市化や人口増加による汚濁が進み、"水道水源湖沼としては水質全国ワースト1"という不名誉な状況が30年以上も続いていました。

そこで千葉県が中心となって2001年に立ち上げたのが、「印旛沼流域水循環健全化会議」。従来のように下水道の整備など汚濁の発生源だけに焦点を当てた対策ではなく、雨水の地下浸透や地下水など "水循環"の視点から問題を捉え解決しようという試みです。

みんなが参加する体制にサポート役として

「印旛沼流域水循環健全化会議」が画期的だったのは、河川、環境、農林水産、上下水道、都市など関連する様々な部署に参加を呼びかけ、横断的な協力体制を作ることで多面的な取り組みを実現しようとしたこと。また、プロジェクトを「住民と共に進める計画」と位置づけて、行政だけではなく、流域住民70万人一人ひとりが主体となって計画の策定や実践に携わることのできる体制を築いたことです。
その重要プロジェクトに印旛沼流域水循環健全化会議事務局のサポート役として参加したのが、パシフィックコンサルタンツでした。

新しい挑戦が、活動の輪をさらに広げる

様々な観点、立場、専門性からのアプローチにより、「印旛沼流域水循環健全化会議」は着実に成果を上げていきました。2004年には、2030年を目標年次とする長期目標を設置。2010年をメドとした「緊急行動指針」を作成し、"平常時の水量回復""水質改善"などの観点から63にもおよぶ対策を掲げました。さらに2007年には水質汚濁の大きな原因と指摘されながらも手付かずだった"畑作地域の水循環の問題"にも取り組み、農家と一体となっての減肥への試みにも着手。住民一人ひとりの「印旛沼を美しい湖沼にしたい」という意識が大きなムーブメントとなったのです。
これは、行政とパシフィックコンサルタンツという"民間"の力が一体になることによって実現した、貴重な成果の一つでした。「緊急行動指針」完了の年となる2010年。湖沼として千葉県内最大の面積を誇る印旛沼で起こった活動は、さらにその輪を広げようとしています。その姿は、パシフィックコンサルタンツが"コンサルタントの枠にとらわれずに、新しい領域に挑戦した事例"として、深く次代に刻まれていくのです。

プラス1

パシフィックコンサルタンツが重要視したのは、「地域の人々の関心を高めて、大きなムーブメントにしていこう」ということ。従来のコンサルタントの枠にとどまらない関わり方だった。印旛沼が目指す姿として「遊び、泳げる」「人が集い、人と共生する」「ふるさとの生き物をはぐくむ」「大雨でも安心できる」の4点を掲げ、流域住民の声をすくい上げようと「印旛沼わいわい会議」と題した住民会議を年1~2回開催。毎回200~300人が参加して、都市部と農村部など特性が異なる地域がそれぞれの取り組みや現状を報告しあった。水質や湧き水などのモニタリング調査にも、市民の参加を呼びかけている。水の透明度測定にカエルのイラストをマスコットにした「見透視度計」を設置したのは、「わかりやすさ」「親しみやすさ」を打ち出すためだ。