2003

「エチカ表参道」モデルステーション計画

「エチカ表参道」モデルステーション計画

限定された条件の中で、鉄道施設と商業空間を魅力的に融合

地下鉄の街と地上の街をつなげよう

「地下鉄の街」と「地上の街」をつなげることを目的とした、駅ナカ商業施設「エチカ表参道」。26の専門店が軒を構えるスペースはおよそ1,300m2で、日本の地下鉄駅構内の商業施設としては最大規模です。表参道駅の乗降客1日約14万人弱のうち、およそ1万人に利用されているという盛況ぶりです。
2003年、パシフィックコンサルタンツは、この地下構造物の設計監理をコンペに勝ち抜いて獲得しました。

古い、暗い、低い。その先にあるものは?

営団地下鉄から要望された企画のテーマは2つ。「鉄道事業施設としての新しい駅のあり方」と「余剰スペースの事業化」でした。
表参道駅は、銀座線という日本で最初の地下鉄路線にある駅で、さらにそこに半蔵門線、千代田線が増設・拡張されてきました。そのために地下構造物としては極めて複雑な形で、しかも古い図面は部分的にしか残存していないという状況です。目に見えない部分を断片的な資料から手探りで推理しながら、実態調査でチェックして設計するという方法をとることになりました。
こだわったのは、古い地下鉄駅特有の"狭苦しさ"を払拭すること。実施したインタビューで、「駅が古い」「暗い」「天井が低い」というような施設への不満が数多く聞かれたからです。ただし不満は聞けてもその先は出てきません。コンペに向けては収集した情報を最大限に検討・活用し、試行錯誤を繰り返しながらストーリーを組み立てていきました。

Breeze of Omotesando

パートナーの商業コンサルタントとともに導き出したコンセプトは「Breeze of Omotesando」。表参道駅から地上に出れば、そこにはパリのシャンゼリゼ通りにたとえられる美しい並木道のブランドストリート「原宿シャンゼリゼ商店街」があります。その雰囲気を地下にまで引き込み、街との一体感を地下空間にもたらそうという提案です。結果、大手広告代理店や設計デザイン会社ら数多くのコンペティターを押さえてパシフィックコンサルタンツが事業のパートナーに選ばれ、"表参道駅パリ化計画"が始まったのでした。
エチカ表参道は、"鉄道施設と商業空間を魅力的に融合させる"ことに成功した日本で初めての本格的な開発事例となりました。注目は国内だけでなく世界の鉄道関係者からも集まり、以降活発となる「駅ナカブーム」を巻き起こすきっかけとなったのです。

プラス1

その時、時代は!

2005年にグランドオープンしたエチカ表参道。東京メトロ主導で進んだテナント選定においては、地上との一体感が重要視された。「街に足りないものがある」をコンセプトに、化粧品やファッション雑貨を扱うショップ、時間のない人のためのクイックヘアスタイリング、おしゃれなファストフードなど、女性が1人でも気軽に利用できる個性的なテナントにこだわった。表参道の周りには高級店が多い。リッチな気分や本格的サービスを望むなら、そちらを利用してもらえばいいというわけだ。「1人」「クイック」「気軽」という潜在的なニーズに応えられるところが、エチカ表参道の特徴だ。
出店を希望する企業は400社にも上ったが、東京メトロはこのようなコンセプトを考慮し、慎重に26店舗に絞り込んだ。