1984

東京湾横断道路環境調査/その1

東京湾横断道路環境調査/その1

海を挟んで東京湾岸エリアが一つにつながる

川崎と千葉を、東京湾経由で結ぶ自動車道路

海ほたるがデートスポットとしても人気を集める、東京湾横断道路(愛称:東京湾アクアライン)。神奈川県川崎市から東京湾を通り、千葉県木更津市に至る自動車専用道路です。開通は1997年。全長は15.1kmにおよび、川崎側からのおよそ9.5kmがアクアトンネルと呼ばれるトンネル、木更津側からのおよそ4.4kmがアクアブリッジと呼ばれる橋梁となっています。
アクアブリッジは、開通当時海にかかる橋としては日本で一番長い橋梁。アクアトンネルは、関越トンネル、山手トンネル・飛騨トンネルに次ぐ、長さが日本第四位の道路トンネルです。

水面下60m。軟弱地盤と高水圧との戦い

東京湾に道路を横断させようという案が持ち上がったのは、1966年。当時、房総半島からの東京・横浜方面への移動には、JRを利用して東京湾沿いをぐるっと回る必要がありました。その時間的な負担は大きく、「なんとか短縮できる手はないか...」という声が活発化してきたのです。そこで、川崎と木更津を結ぶという、これまでに類を見ない計画が浮上。1966年に建設省が調査を開始し、1976年に日本道路公団がそれを引き継ぎました。しかし、海底トンネルで神奈川と千葉を結ぶとてつもないプロジェクト。最大の難関は、軟弱地盤と高水圧が行く手を阻む"東京湾の水面下約60mの掘削"で、その他にも東京湾の生態系を守るための課題が山積していました。そこで1984年、パシフィックコンサルタンツが大気や振動、水質や生態学、景観などの環境調査全般を担当。環境保全と両立させた巨大プロジェクトの実現に向けて、力を尽くすことになったのです。

通勤だけでなく、レジャーの幅が拡大

環境調査をはじめ様々なデータが集められ、実現性の検討を重ねた末にようやく、1989年に着工。1995年に橋梁部分が、1997年にはトンネル部分が完成し、開通を見ました。現在、東京湾横断道路は、川崎と木更津を30分で結び、湾岸地域の交通渋滞を大幅に解消させる切り札の一つに。特に充実している高速バス路線は、通勤手段として頻繁に利用されています。また、木更津駅から横浜駅や川崎駅、羽田空港へ、あるいは東京駅から木更津駅や勝浦駅、館山駅などへの路線も数多く運行。おかげで首都圏の人々が房総半島の自然や食文化に手軽に触れることができ、逆に房総地域の消費者が川崎、横浜、東京などへショッピングに出かけることができるようになり、新たな消費動向を生み出すことにも貢献しています。

プラス1

その時、時代は!

東京湾横断道路の総工費は1兆4,409億円。竣工式を行ったのは、日本道路公団と「東京湾横断道路の建設に関する特別措置」に基づいて建設協定を締結した東京湾横断道路株式会社。ちなみに当初の通行料金は普通車で5,000円を予定していたが、開通時には4,000円に。以降幾度か改定が行われ、現在ではETC搭載普通車で2,320円、ETC期間限定割引では800円となっている。
海底トンネルと海上道路の境目にある海ほたる。パーキングエリアとはいえ、ショップやレストラン、展望デッキなど設備は充実している。その特別なロケーションから、開通当時は見物客・観光客が長蛇の列をつくった。
ちなみに『ゴジラ対デストロイア』『20世紀少年』『木更津キャッツアイ』をはじめ、漫画や映画など多くに東京湾横断道路は登場する。